お茶会で ページ18
「ねえ華璃、カチュア、気付いた?」
今日は制圧命令がなかったから、スージーの部屋にお邪魔していた。林檎のジュースを一気に飲み干して、尋ね返す。
「気付いたって、何に?」
「最近、制圧命令が少なくなってきていません?」
スージーは部屋の半分近い面積を持っていそうな大型のタンクのようなものに入った血液をチューブから飲み干す。彼女のコードネームは吸血鬼だけど、血液を飲むからつけられた名前なのかしら。それにしても、飲む量が多い気がする。
カチュアはあたしの隣で、興味深そうにスージーの話を聞こうと少し身を乗り出している。コップの中の氷が少し溶けて、からんと音を立てた。
「ほら、ここ一週間アラームもないでしょう?お陰で暇ですし、仕事がなさすぎるからお金も段々なくなってきたし」
「あ、確かに。でも、幻想体の脱走がなくなったら職員さんが犠牲になったりしないし、良い事なんじゃないかな」
確かに制圧をするとお金が貰えるけど、代わりにあんな事をしなければならない。あたしはどうしてもそれが嫌で、正直なところ、制圧がない事をいつも願っていた。
けどスージーはお金使いが荒いからか、制圧がないときついらしい。前にそう言っていた。確かにあの量の血液を毎日飲んでいるとするなら、食費なんかもかかるんだろう。
「まあそれもそうですわね。忙しい時は忙しい時で文句を言ってしまうものですけど、暇になったらなったで言いますものね」
「そういうものだよ、仕事って」
「それもそうですわね」
お菓子を一口二口食べて、それを林檎ジュースで飲み込もうとして……あ、林檎ジュースもう飲んじゃったんだった。
口の中が少しぱさぱさするなぁ。仕方なく、コップの中の氷を口に含み、噛み砕いた。渇きは収まったけど、今度は口の中がものすごく冷たくなる。
「でも妙だと思いませんこと?相次いでいた脱走がいきなりなくなるなんて」
「怖い事言わないでよ……あ、そろそ帰るね。ジュースとお菓子ありがと!」
「ありがとうスージーちゃん、美味しかったよ!」
「どういたしまして」
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