休日 ページ16
あたし達はBETA寮棟で職員さん達とお喋りする事にした。BETA寮棟には売店もあるから、ちょっとしたショッピングも楽しむつもり。
「こんにちは。いつもお疲れ様です」
「こんにちは、魔法少女」
割とここに来る事は多いから、たいていの職員さんとは顔見知りだ。挨拶に短く答えてくれたのは、口がたくさんある女の人。名前や番号は知らないけど、多分彼女は植物が好きなのだろう。売店でお花の種や肥料を買っていたのを見た事がある。
彼女のすぐ後ろでは、大きな機械を運ぶ男の人が二人。一人は兎の耳がある。もう一人は茶髪の若い男の人。
彼らの名前も素性もあたしは知らないけど、二人は仲が悪いって事だけは知っている。その証拠にほら、互いに足を引っかけあって相手を転ばせようとしてあるのよ。前に見た時は嫌味を言い合ったりしていた。なのに、彼らは妙に二人でいる事が多い気がするわ。
「白雲、早くしろ」
「そんな事、言われましても……っ」
半ば悲鳴みたいな声を出しながら、白雲と呼ばれた兎耳の男性が足を早める。茶髪の男性は余裕そうだ。スーツで分かりにくいけど、筋肉があるのかもしれない。
「あの、手伝いましょうか?」
「心配はいらぬ。白雲、やれ」
白雲さんがきつそうで、思わず声をかけてしまうけど、白雲さんが返事をする前に、女性がそれを妨げた。だが白雲さんは苦しそうだし、手を貸そうとまた声を掛けようとして……。
『A-723-Yが脱走しました。付近の職員は速やかにA-723-Yを制圧してください。繰り返します。A-723-Yが脱走しました。付近の職員は速やかにA-723-Yを制圧してください』
『A-121-BはA-723-Yを制圧してください。繰り返します。A-121-BはA-723-Yを制圧してください』
アラームが鳴る。ああ、また収容違反?それも、この休日に。タイミング悪いなぁ。そう呟く。カチュアに目配せをして、女性達に一例。
急いで制圧に行かなくちゃ。
……そういえば、最近この幻想体脱走しすぎじゃない?そう思った。管理体制の変更でもあったのかしら。何か変質でもしたのかしら。制圧するのはあたし達なのに。
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