ドロモスワークスカンパニー (ページ14)

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制圧完了ページ14

『A-723-Yの制圧が完了しました。担当職員はA-723-Yの収容室内で待機してください。繰り返します。A-723-Yの制圧が完了しました。担当職員はA-723-Yの収容室内で待機してください』

　死体を運んでいく職員さん達を眺めながら、あたし達はコーラを、Jackさんは紅茶を飲んでいた。

　飲み物は廊下の自動販売機で買った。注文した飲み物がコップに注がれるタイプの自動販売機だ。仕事終わりの一杯というやつである。他の職員さんは再収容の準備や後片付けをしているのにも関わらずだ。我ながら良いご身分だとは思う。

　けど、こんな風にして平静を装わなければならなかった。だってまだ、あたしの手にはあの女の人の首を捻り切った感覚があったんだから。

　何かを殺すっていう行為には、どうしても慣れない。

　首に手を当てると、脈動が感じられるでしょう？人肌の柔らかさとか、ぬくもりだってある。生きているっていう、証が。

　けど、その手にほんの少し力を入れるだけで、粘土細工みたいにぐにゃりとへし折れる。

　その時の、感覚。腕がぞわりと震えるような、恐怖感。命が失われて、人間がただの物になる。物体になる。肉の塊、大きなタンパク質になる。命かなくなる。

　その変化のおぞましさは、何にも例えようがなかった。

「僕はそろそろ戻らなきゃ。じゃあね、二人も頑張って」

　Jackさんは紅茶の入ったコップを片手に、一足先に帰って行った。最後まで彼の瞳は赤いままで、始めに見た茶色がかった瞳にはならなかった。不思議には思ったが、彼はおそらくそういう幻想体なのだろう。

　ぼんやりしながら氷が溶けてきて薄くなったコーラを啜っていると、どうにか落ち着いてきた。自動販売機横に設置されているゴミ箱に空のコップを捨てる。ゴミ箱の底にカップがぶつかる軽い音がした。

「華璃ちゃん、私達もお部屋に戻ろっか」

「そうだね。今日の制圧でお金もそれなりに貰えたし、何か食べて帰る？」

「えー、足りなくなってこの前みたいな事になったらやだよ……」

　そんな事を喋りながら。あたしはあの感覚を一刻も早く忘れてしまおうと努力した。