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絵画を求めて、私は世界中を駆け回る。
美しい絵画なんてものは、それこそ世界中にある。でも、世界で一番美しい絵画となると、話は別。たくさんの美しい絵画同士を見て、どちらがより美しいかを判定する。それだけで、何時間も、へたすると何日もかかった。時間がもったいなくて、私はもはや半泣きになりながら絵画を集めた。
だからといって嫌だったわけではない。むしろ楽しくすらあった。絵画を並べて、あれが美しいだとか、この筆づかいがどうのとか、そんな事を言ったりするのは良い息抜きになったし、順調に増えていく絵画を見ると、満足感に満たされるようだった。世界中の絵画を集めたら、きっと素敵な事に違いはなかった。
一度、ロレッタちゃんと絵画を見た事があったけど、彼は芸術品にそこまで興味はなかったらしく、暇そうにしていたっけ。ああ、でも、食べ物の絵画だけは面白そうに眺めていたわね。その様子があんまり可愛くて、笑ってしまったら拗ねちゃったのを思い出す。スーノルノちゃんはどうだったかしら。確か、売ったらどのくらいの利益があるか計算してたわね。あの子らしくて面白かったわ。
ロレッタちゃんやスーノルノちゃんだけに問わず、私は小さな子が大好き。小さい子って、可愛いじゃない。もちろん、可愛いものは大好きよ。でもね、その中でも小さな子を見ていると、とても嬉しくなるの。
それでね、私が世界一の絵画だと思ったものが小さな子を描いた絵だったのも、不思議ではないわ。
ようやく満足できて、私はその絵画を部屋に飾った。珍しい事に、飽きっぽい私でも、その絵画だけは捨てずにずっとそこに飾らせ続けていた。
しばらくはその絵画を眺めていたけど、やがて新たな欲望が胸の奥を掻き乱していった。いいえ、その欲望はただ私の心の底に沈んでいただけ。私の心があの時から何を望んでいるのか、私は知っている。ずっと昔から理解していたの。
でも、私はそれだけは叶える事ができない。
だから私は次の欲しい物を口に出してみる。すると、そんなに欲しくなかった物も、途端に欲しくなる。今までずっと、こうしてきた。
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