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人が焼ける、良い匂いがする。香ばしくて、美味しそうな匂い。人間の悲鳴が、頭の中で響く。心地良い。うっとりと目を閉じて、私は歌を歌うのだ。
今、私は街を焼いている。この街の人間は私にお菓子をくれなかったの。ひどいと思わない?だから、菓子職人と、他の職人を引きずり出して、残りは皆殺しにするの。どんなゴミにも利用価値はある。ほら、現に、素敵な子守唄を歌ってる。
そんな最中、音が聞こえるの。ずる、ずる。何かを引きずる音。焼きすぎた肉みたいな、焦げ臭い匂いがする。嫌な匂いだわ。目を開ける。
女がいた。女、だと思うわ、ええ。全身の皮膚が焼けただれていて、顔がぐちゃぐちゃに溶けているから、よく分からないの。でも、肩幅や体格からして、おそらくは若い女なんじゃないのかしら。女は私に何かぶつぶつ言っているから、耳を寄せてみた。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
なんだ、つまらない。私は呆れたように女を叩こうとしたけど、手は女の身体をすり抜ける。あら、幽霊なのね。まあどうでも良いのだけど。
でもこのままついてこられるのも嫌だから、ちゃんと追い払わなきゃ。そのためには私の正当性を主張しなきゃね。
私はここのお菓子が食べたかったの。なのにここの人達は私にお菓子をくれなかったどころか、私に石を投げたの。魔女め、って。だから、私が怒ったのも仕方ないと思うのよ。
それにね、私、暇だったの。そこへちょうどよく腹立たしい人間がいたのだから、そいつの家族親戚皆殺しにするくらい許してほしいわ。ううん、許しを請う必要なんてない。むしろ、どうしてあなた達は私をいじめるの?私は何も悪い事してないのに。
あら、いなくなっちゃった。残念だわ、折角の話し相手ができたと思ったのに。もう音楽にも飽きたし、次はお肉でも食べに行こうかしら。
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