人工物、あるいは人ならざる者 (ページ2)

今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:3,826 hit

1 ページ2

ジェベリアは気が付くと宙に投げ出されていた。青い空が見えて、次の瞬間には着水した。ジェベリアはどうやら、湖に突き落とされたようだった。彼女がそれを自覚した時には、もう悲鳴もろくにあげられなかった。

　ジェベリアの身体はいくつものパーツに分解されていた。彼女は自身の胸、腕、脚を見ていた。断面からどろどろとした血液が溢れて、湖を赤く染めていく。ジェベリアは首だけになっていた。

　何があったろう？ジェベリアは思い出した。確か、仕事だったはずだ。普段と何一つとして変わらない仕事のはずだった。なのに……。

　油断なんてしていない。ジェベリアは首を横に振ろうとしたが、振れもしない事を思い出した。

　首の断面からも血が溢れていく。ガラスでできた美しい眼球が、抜け落ちる。するとあっさり、ジェベリアは視覚を失った。しかし彼女はそれを気にも止めなかった。自身の命がそう長くはない事を悟っていたからである。

　ジェベリアは暗く冷たいその空間で、ただ考えていた。

　彼女には一つ心残りがあった。後悔と言うほどの強い想いではない。一人の腐れ縁の友人の事だ。こんな失態をするなんて。きっと私は彼に、らしくないと笑われてしまうだろう。ジェベリアはそれが嫌だった。今回のそれはちょっとした不調だ。普段ならば軽くこなせた、はず。

　思考が湖に融ける。ジェベリアはあっさりと、その命を失った。ジェベリアであったプラスチックの球体関節人形と血液は、冷たい水の底に沈む。

2→←キャラクター