フォビアコンプレックス2 (ページ8)

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第五十六話　レヴィアタンページ8

捕縛したラミアを運送していたトラックが、何者かの襲撃で破壊されたそうだ。

　ワタシは溜息をついて、長い前髪をいじる。

　トラックを破壊したやつらの正体はだいたい予想がつく。どうせ秘密結社のやつらだろう。ミュータントを暴走させて、地下世界を壊滅させようとしているのだ。地下世界最高峰の武力を持つ東区から叩き潰そうとしたのだろう。

　まあ……この騒ぎでやつらが目覚めなくて良かった。

　ワタシは画面をスライドして、あるミュータントを見やる。

　無機質な白い部屋の中央に、一人の少女が横たわっていた。彼女の脳味噌に直接繋がれたチューブから投与される物質で、彼女はもうかなりの時間を眠って過ごしている。

　ぼさついた銀髪は無造作に投げ出されており、その肌は病的なまでに白い。例えるなら、物置に放置されてほこりが積もった古い人形、って感じ。

　これはナンバー０６６６、ネロ。ミュータントの中で最も危険度が高い存在の一つであり、目覚めればこの地下世界は簡単に崩壊する。

　秘密結社がネロを起こせば、それこそワタシ達は終わる。やらないとは思うけど。だって、ネロの能力は無差別に発動するのだから。起こしてしまえば、秘密結社のやつらもまとめて死ぬ。

　危険なミュータントはもう一つあるのだが……“あれ”については語るべきでもないし、考えるべきではない。“あれ”の存在は認識しちゃいけない。

　そう考えていると、視界の端が白く染まっていくのが分かった。急いで、“あれ”の存在を頭から追い出す。“あれ”の残滓はワタシの目の前に白くこびりついてきたけど、しばらくすると消えた。どうやら諦めたようだ。

　……ふぅ。

　やるべき事が多すぎるよ。妊娠したアラクネは気が立ったせいで逃げ出したし、月兎の死骸処理には特殊装置が必要だし、ラミアはまだ捕まってないし。

　それに、薔薇宮の事もそろそろどうにかしなきゃね。

　彼女の正体は寄生植物アルラウネ。しかも始祖の株分け個体。本来ならばここに収容される必要があるような、比較的危険な個体だ。

　けど、アルラウネ種の始祖は非常に優秀な女性だったから、利用する事にした。

　化け物である事を隠し統治者として勤めていた彼女を脅して、研究および軍事施設を発達させたのはワタシ。彼女は妹と夫を助けるために統治者になったみたいだったから、その二人を人質にもした。

　でも、施設ももう十分だし、人質も死んだから、実験以外の用はもうないや。