フォビアコンプレックス2 (ページ5)

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第五十三話　リィページ5

私はリィ。つい最近、コールドスリープから目覚めた。私は南区で働いて、友達もいて、それなりな生活を楽しんでいたのだけど。

　ちょっと怖い噂を聞いたのよ。東区と西区が戦争するのですって。そして、その戦争に南区も参戦するんですって。

　あくまでも噂よ。でも、怖い。もしかすると、ここにミュータントなんかが放たれて、皆死んじゃうかもしれない。そんなのってないわ。だからかしら、友達の何人かは東区を経由して北区に逃げ出したの。北区はこの戦争に関与するつもりはないらしかったから。

　私も、北区に逃げる事にしたの。北区には知り合いもいたし、少しの間だけ匿ってもらえないかなって。

　東区を通過する必要があったのは怖かったけど、やるしかないでしょ？それに、もしかすると東区もそこまで怖くないかもしれないし。東区の様子を見て、戦争の匂いがしなかったら、そのまま南区へ戻ろうと思っていたわ。

　けど、不幸は憑き物。東区に来た途端、ミュータントの脱走があって、私は命からがら走って逃げた。

　気がつくと、私は公園に辿りついていた。看板には

『羅光公園』

　とだけ書かれていた。羅光公園については知っていた。既に生命活動を終えたアルラウネ種の始祖個体の残骸があって、それに願い事をすれば何でも叶うのだとか。

　周りにも、私のように避難してきたと思われる人がいた。どの人達も不安そうにしていた。私は一人になりたくて、大きな残骸の影に隠れる。

　昔から、暗くて狭い場所が好きだったから、なんとなく落ち着いて、不安から逃れられて安心したのもあり、残骸を背もたれにして、私はそのままうとうとしてしまった。

　……。

　……。

　目が覚めると、身体が動かなくなっているのに気がついた。起き上がろうとしても、できない。背もたれにしていた残骸が、私の身体を飲み込んでいっている！

　顔も飲み込まれていて、目の前が暗いし、息が出来ない。助けも呼べない。まだ外にあった脚をばたつかせたけど、侵食は止まらない。

　逃げ切れずに、そのまま、飲まれて、そして……。