第七十話 篠原 弼 ページ23
地獄絵図。
この現状を表すには、恐らくその言葉が相応しいだろう。
危機感を忘れた俺は、呑気にベランダから脱走したらしいミュータントを見下ろす。
清々しい程に晴天のパネルとは裏腹に、地上は血みどろで、悲鳴が飛び交う酷い光景だった。こんなんだったら、今日はバイトに行けそうにないな。
バイト先に電話を掛けようとしたが、おかしいな、誰もいなかったのか、電話には誰も出なかった。困るな、今度怒られちゃうかもしれない。
「…あ、そうだ。通報。」
ミュータントが脱走してるのに通報という考えがすぐ浮かばなかったのは、きっとそういう常識も抜け落ちてしまったのかもしれない。
ソファに座り、楽にしながら、平坦な声で通報する。警察って、ミュータントとか沈めなきゃいけないのかな、大変だなあ、と他人事に考えながら、そうだ、テレビでも見よう。だなんて、突発的に思い浮かぶ。
とん、と隣に携帯を置き、テレビをつけてみるが、やはり面白く感じない。あぁ、龍怕さんでもいたら…なんて、そこまで考えて、やっぱりやめた。
………きっと、テレビを見てる途中で更に悲鳴やらなんやらが聞こえることになるだろうし、もう、寝ようかな。
つけたばっかのテレビを消して、布団を体の上に被せると、外の悲鳴に聞こえないふりして瞼を落とした。
9人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年12月16日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 更新します! (2019年12月16日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しましーた (2019年12月16日 22時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しまっす (2019年12月16日 21時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年12月10日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ