第六十四話 エルンスト ページ16
「……ってて……なんだったんだ、さっきの……」
俺は暗闇の中で目を開けた。瓦礫に埋もれた俺の体はどこもかしこも痛くてたまらない。
「ああ、クソッ!あんだけオレが嫌な予感がするって言ったのに!オマエが呑気に掃除なんか手伝ってるから!」
俺の背中の方から絶え間なく聞こえるハインリヒの悪態。半生き埋めみたいなこんな状態でも、こいつは徹頭徹尾普段通りの調子。
そのせいか、生死の境みたいな状態のくせして安心してる俺がいる。
「あ"ー……だーれかー……」
蠍の鋏にも似た左腕で自分の上に重なる瓦礫をどけようとしてみたが、内側からではどうにもならなそうだ。
そのうち誰かが倒壊した建物の片づけにも来るだろう。数日なら飲まず食わずでも平気だし……と考えたところで、不意に寒気がした。一週間経っても誰も助けに来なかったら?
隙間から差し込む微かな光に妙に不安になってくる。
遠くで誰かの声がするなぁ。
「……ーい……そこ……るか……」
「んぁ?よく聞こえねー!もっと大声でしゃべれー!」
「……だれか、そこにいるのか!?」
「いるよー!どっこい生きてる岩の中ー!」
案外、俺の不安は外れるらしい。
ごどごどと音がすると思えば、あっという間に俺は救出されていた。ようやく解放され、大きく伸びをする俺を救助隊みたいな連中が眺めている。
「なんだ?オレたちのこと変にじろじろ見やがって」
「喋った!?」
俺の尻尾に驚く男。彼の後ろから、リーダー格風の別の男が現れた。
「……君たちは、発病者のようだね。体は大丈夫かい?」
「けがはしてない、ってか治った。助けてくれてありがとな。だがまぁ、俺は貧民だ。謝礼に渡せるもんなんて持ってない」
「受け取るつもりももとよりないよ。それより、この騒動で君の家も壊れてしまったんじゃないか?よければ、我々のところに来ないかい?」
その言葉に、ハインリヒが牙をむきだした。
「信用ならねェなァ。そんなこと言って、結局オレらを利用したいだけじゃねェのか?」
「そうだね、では我々から名乗ろう。私たちは『秘密結社』の者だ。この地下世界に革命を起こし、君たちのように苦しむ人間をなくそうとしている」
「でもなぁ、言うほど苦しんでもないし」
「今入社すれば一日三食、完全個室の寮付きで日給このお値段」
「よし、入るか!」
「おい!」
かくして、秘密結社に優秀な戦闘員が増えたのであった。
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ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年12月16日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 更新します! (2019年12月16日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しましーた (2019年12月16日 22時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しまっす (2019年12月16日 21時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年12月10日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
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