フォビアコンプレックス2 (ページ13)

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第六十一話　クランクハイトページ13

「第二部隊、用意！救護班は対象に発見されないよう細心の注意を払え！見つかれば食われるぞ！」

西区が東区へ宣戦布告してから数日後、遂に東区からの攻撃があった。南区を経由して送り込まれた二体のミュータントによる被害は甚大、統治者補佐たるオレが直々に現場指揮にあたっているが今もなお捕獲には至っていない。

「クランクハイト様！捕縛綱、破られました！」

「クソッ、麻酔の効きが悪すぎる……これだからミュータントは！」

各種トラップや麻酔銃などで捕獲を試みてはいるが、異常な自己再生能力と破壊力故にどちらもろくに効果を発揮できていない。
手当たり次第に破壊を繰り返し人間を食らおうとする蜘蛛系のミュータントはもう一方に比べ特に厄介だ。というか、犠牲者の大半はこちらのミュータントによるものだ……

「……蜘蛛……子供好き……なんか引っかかるんだよなァ……」

「ミュータントが接近しています！逃げてください！はや……」

記憶の奥底にしまわれている何かをつかみかけていたオレの顔に、生暖かい液体がかかった。
はっと顔を上げれば、この地区の自警団副長がミュータントの口に収められるのが目に入った。

「あら、まだここにもおチビちゃんが……とっても怖い目にあったのね、つらそうな顔してる……だいじょうぶ、わたしがまもってあげる」

人間と思えないような歪な腕、体、奇妙な色の瞳。

「こわがらないで、だいじょうぶよ」

脳裏にぱちりとよぎるあの人の顔。

「……母さん」

その顔は自分の愛した人とは似ても似つかなかったけれど、小さな子供を守ろうとするその言い方は、あの時の母親そっくりで。

「……近寄るな、オレに触るな、化け物が！お前なんかに守られたくない、お前は、お前は……！」

オレは腰に下げていた短剣でミュータントの心臓を貫いた。ミュータントの胸や腹、オレの目の前にあるあらゆる部位を必要以上に突き刺し続けていた。

「クランクハイト様！」

自警団の声で我に返ったとき、オレもあたりも真っ赤に染まっていたが、ミュータントからはまだなにか声が聞こえてきていた。

「……ミュータントが衰弱している。今のうちに治療施設に連れていけ」

「……はい」