フォビアコンプレックス (ページ7)

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第六話　レヴィアタンページ7

廊下が真っ赤にぬめっている。その上を進む。

　ワタシはレヴィアタン。軍部サービスの所有地であるこの収容施設兼研究所で働く研究者の一人。ミュータントだったのだけど、ワタシはここで働ける。なぜならワタシは賢いから。

　それはともかく、この騒ぎはなぁに？おおかた、ミュータントが脱走したんだろうけど。

　ワタシの腕にあたる器官を、空中ですっと動かす。すると、装着している通信機が反応し、ホログラムを組み立てた。この施設の地図。

　収容室の一つが赤く点滅している。ここに収容されていたのは、確か収容ナンバー００２８……ワスプか。虫型の機械のような、あるいは機械のような虫というか、無機質な、まるで生物らしからぬゼロ生物。

　まだ研究がろくに進んでいないから、あいつの脱走条件なんて一つしか分からないけど……多分、それのせいだ。オレンジ色のものを見ると、あいつはひどく興奮するようだったから。闘牛でいうなら赤い布のようなものだ。いや、あれは確か、布の色ではなく布の動きに反応しているんだったっけ？

　ともかく、どうにかしなきゃ。形跡を見るに、とっくにこの施設から抜け出してしまっているみたいだった。

　転がっている目玉を拾い上げて、ぐちゃぐちゃと咀嚼する。あまり美味しくない。拾い食いはやっぱりするべきではないかも。ぺっと吐き出して、ホログラムを操作する。

　ワスプの沈静化は専門部隊に任せる事になっている。ワタシが関わるべきではない。それに、ワタシにもまだ仕事は残っているのだ。

　ええと。まず、３５９８を……ノスフェルトゥを廃棄処分しないと。いや、厳密には廃棄処分じゃないな。羅光公園に存在する巨大アルラウネの肥料にするだけだ。一ヶ月後にはワタシの妹である１１５５が肥料になる。その手筈もちゃんと整えられているか、確認しないとね。

　あ、そういえば、近くの中華饅頭屋のお饅頭が、結構美味しいんだって聞いた。ちょっと誰かに買いに行ってもらうとしよう。