フォビアコンプレックス (ページ50)

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第四十九話　レヴィアタンページ50

他のやつらに対応していたら、ついうっかりアラクネを逃がしてしまった。

　すさまじい勢いで鎮圧部隊を蹴散らし、南へと逃げていったらしい。この後も追いつけなかったら、多分南区に侵入するだろう。もしかすると、そのまま西区に逃げ延びるかもしれない。

　それだけは避ける必要がある。西区はミュータントであろうと元の人間に戻そうと治療するのだ。あの頭のおかしなやつらは、ミュータントの価値がまったく分かってないから。

　そういえば、他にもラミアやサキュバスが逃げ出してしまったっけ。ラミアはまだ良い。ゼロ生物になりたてのミュータントは、そこまで強くない。

　問題はサキュバスだ。彼の放つ呼気には強い中毒性がある。それが散布されたら？

　……まあ、最も危険なミュータントが目覚めなかっただけましだろう。あれらが目覚めたら、東区だけじゃなく、この地底世界そのものが崩壊するんだから。

　この施設に特攻してきたのは秘密結社のやつらだった。ミュータントを暴走させ、東区を弱体化させようとしたのだろうか。

　後で詳しく問いたださなきゃいけないけど、それよりもやるべき事がたくさんある。ワタシは目の前の画面を操作し、次から次へと鎮圧部隊に指示を出していく。

「殺す気でやって、どうせあいつらは死なないから。人的被害も考慮しなくていいから」

　マイクにそう呼びかけるけど、反応がない。代わりに、くちゃくちゃと、何かを貪る音がする。鎮圧部隊がやられたのか。

　使えないなぁ。

　舌打ちして、ワタシは本来の業務をこなす。ワタシは研究者なんだから。研究者は研究する事が仕事なんだし。

　アクアキャットもそろそろ始末しなきゃなぁ。あと、サキュバスも処分する事になるだろう。危険性が知られたら、それについてとかく文句を言って来るやつはたくさんいるし。サキュバシウムもほとんど分析できたしね。