フォビアコンプレックス (ページ27)

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第二十六話　薔薇宮ページ27

「ねえ、ローザ！まだあいつは見つからないの？！お願い、早く見つけて連れて来てちょうだい！このままじゃ、私は……」

　目の前の私自身にそう叫ぶけど、彼女は肩をすくめながら苦笑する。

「落ち着きましょうよ、小町。そうかりかりするものではなくってよ？いくら肉体が暴れ出しても、支配できているのだから問題ないでしょう？」

「その支配が無効化されはじめているのよ！ああ、このままじゃこいつに身体をとられてしまうじゃないの！」

　その悲鳴に答えるかのように、私の右腕ががくがくと震えだし、そして身体を奪い返そうとするみたいに、必死に暴れる。それをどうにか抑えながら、私は呻いている。

　私達アルラウネは寄生植物だ。自分に近い遺伝子を持っている他人の身体を奪い、操る。けど、私とこの身体は相性があまり良くなかったみたいで、この身体の持ち主は必死に自分を取り戻そうとしている。このままでは、奪い返されてしまうのも時間の問題だろう。

　その前に、新しい身体を探し出さなければならなかった。

「ねえ、大丈夫よ。私はローザ。ローズ牧場の主よ？あなたの新しい身体なんて、いくらでも用意できるわ」

「嫌よ、家畜を新しい身体にするなんて！」

　わがままだとは分かっていた。けど、これだけは譲れなかった。家畜を宿主にするなんて、私のプライドが許さなかった。だって、家畜よ？普通の人間ならまだしも、家畜なんて！

　ローザはため息をついた。仕方ないわねと言わんばかりに。

「分かったわよ、ちゃんと探し出してみせるわ。はあ、あなたってば、とってもわがままなんだから。南区にいる特殊遺伝子保持者ちゃん、ちゃんと連れて来てあげるわよ」

「ありがとう。それまでにこちらの準備も済ませておくわ。統治者交代の準備って、なかなか面倒なんだけどね……」

　わざとらしくため息をついてみせると、ローザは呆れたように笑った。