フォビアコンプレックス (ページ22)

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第二十一話篠原弼ページ22

時計は朝の3時を示し、薄暗い明かりの点いた部屋の中、口には饅頭、両手はキーボード、視線は画面。椅子が高く地につかない足をぶらんぶらんさせながら今日も今日とてバイト先を探す。
最近はやりたい事も増えてきて、今のバイト代じゃ間に合わない。かといって危ない仕事にはつきたくないので、多少無茶してシフトをぎゅうぎゅうに詰めるしか無いのだ。それに龍怕さんも昨日新しい饅頭を出す、と嬉しそうにしていたし、それも買いたい…いや、龍怕さんがいつもくれるから饅頭には困ってないんだけどね？寧ろ最近饅頭以外食べてないけどね？？

「あ～…やっぱ長時間椅子に座ってるとキツイなぁ…」

首を軽く振ると、ゴキャッとかいう鳴ってはいけない気がする音が鳴ってしまった。正直若干痛い。
また今日もいいバイト先は見つからなかったという意を込めてふぅ、と息を吐く。そしてまた饅頭を手に取り食べる。どーせシフト入ったらそこから帰ってくるまでご飯たべれないし、今の内に詰めておいた方が良い。

気でも晴れないかなぁ、と思ってテレビを付けてみる…が、見慣れたCMが流されていたり、面白くなさそうな番組の番宣ばっかで、気晴らしなんてなりゃしない。
流れるCMからは、西区に触れる様なものは一切流れない。だって西区と東区ってなんか敵対関係らしいし？そりゃ流れないよなぁ。ちょっと残念。
4時になると始まるニュース。別に面白い話題は流れない。事件とか、そんなのばっかり。それに偉い人が関わってる事件は揉み消されるから流れない。世の中物騒だなあ、平和になんねーかなー、ならないだろうなあ…
一人でそんな問答を繰り返し、テレビを見ながら饅頭を食べていた。龍怕さんの作る饅頭やっぱ美味しいなあ、胃袋掴まれるわ、こんなの。

「…あぇ！？もうこんな時間！？ヤッベシフト行かなきゃ…！！」

いつの間にか時計は6時半を指し示し、それはあと30分でバイトが始まるぞ、という意味だった。ヤバイヤバイ、遅れちゃう、そしたら絶対理不尽な理由もくっつけて長々と怒られる！それはヤダ！！走れ俺！！！今日の帰りも龍怕さんに会える！！頑張れ俺！！！！！

「あ"ぁ"ぃ"っ！！！小指が！！！！」

急ぎ過ぎてしまったあまり、小指をタンスの角にぶつけてしまう。クッソ痛い。今日も今日とて不運か～～？？？
痛さに泣き出したくなるのを抑えて、玄関を出る。

……うん、今日もあの美味しい饅頭屋に饅頭を買いに行こう
そう考えると、ちょっとだけ楽になった気がした。