フォビアコンプレックス (ページ15)

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第十四話　レヴィアタンページ15

しばらくすると、ワスプが送られてきた。麻酔で眠らされているうちに、収容室へと運び込まれていく。

　それとは別に、運び出されていくものもある。収容ナンバー３５９８ノスフェルトゥを乗せたトラックだ。

　ノスフェルトゥは大人しいミュータントだった。全身が癌化していて、強い再生能力を持っていた。通常のゼロ生物が持つ再生能力との違いを検証し、暇潰しの道具にしていたのだが、飽きたので廃棄する事にした。

　これで一仕事終わり。唯一残念だったのは、噂の饅頭屋の饅頭を食べられなかった事だけ。ワスプが食べちゃったんだってさ。まあ仕方ないよね。

　それより、早くノスフェルトゥを廃棄しなきゃ！羅光公園の巨大アルラウネの肥料にしなきゃ。最近、植物を育てるのにはまってるんだよね。巨大アルラウネは現在の養殖アルラウネとまったく異なる、天然ものなんだから。しかも千年前から存在しているんだってさ。

　準備を始めようとしていると、唐突にアラームが鳴った。地図のホログラムを表示させてみると、ワスプの収容室が赤く点滅していた。なぁに？また脱走したの？職員と通信を繋げなきゃ。

「ねぇ、何かあったの？」

「た、大変です！ワスプから化け物が飛び出てきましだっ」

　あ、何か潰れた音がした。言い終わる前に、頭でも潰されたのかね。それにしても、化け物？ホログラムを操作し、カメラモードに切り替える。

　そこには、興味深いものが映し出されていた。

　ワスプの背中から、女みたいなものが生えてきている。そのせいだろう、ワスプはひどく興奮していて、職員を手当たり次第に殺していた。

　おそらく、ワスプに食べられた人間が体内でゼロ化現象を引き起こしたのだろう。今回の脱走による民間人の死傷者はたった一名だ。えーと、確か……ホログラムを操作し、捕食された人間のパーソナリティを表示し、閲覧していく。

　飯龍怕。饅頭屋の女店主。改名しており、元の名前はマーガライト・ココ・ベルツ。あれ、そういえばこの名前、エキドナ種の始祖の名前だよね？

　ふむ、この女性、かつてゼロ生物だったのを治療しており、普通の市民として暮らしていたらしい。

「そしてゼロ再発かー」

　呑気に呟いて、収容室に麻酔ガスを投下した。暴れ狂うワスプと、おそらくエキドナ種と思われる化け物、あとその他職員がばたばた倒れる。

　まだ仕事は残ってる。片付けなきゃね。