【派生作品】天使はそこにいた【リクエスト募集中】

天使の日常 ページ2

新品のティーポットから、紅茶を入れる。紅茶特有の良い香りが、お菓子の甘い匂いとが混ざり合う。それはひどく心地の良いものだった。

　それに角砂糖を一つ落として、スプーンでよくかき混ぜた。角砂糖はあっというまにとける。一口飲んで、ため息をついた。温かくて、リラックスできる。自分の中の穢れを浄化されたみたい。

　今日のお菓子はチョコレートケーキで、それは少女の形をしていた。ストロベリーソースやホワイトチョコ、生クリームなどで可愛らしく飾り付けられていて、まるで童話のお姫様のよう。食べる事に躊躇いすら覚えるような、芸術的なデザインだった。

　フォークで突き刺して、ナイフで食べやすい大きさにカットする。まずは頭。首から切り落として、口に運ぶ。

　美味しい。

　まろやかな口溶け、濃厚ながらも後味がさっぱりとしているわ。そこにストロベリーソースの酸味がよく効いている。紅茶を流し込むように飲む。温かいそれに少女の頭はとろけて、胃の奥へと消えていく。

「味はどう、カトレア？」

　キッチンの奥から、お母様の声がした。姿は見えなかったけど、物音からして、どうやら何か料理を作っているらしい。紅茶とお菓子を食べ終えたら、手伝いに行きましょう。

　そんな事を考えながら、二口目を食べようとケーキを見下ろす。

　首を失った胴体。右腕を切り落として、食べる。左腕を切り落として、食べる。溢れるストロベリーソースは、まるで血液のようだった。

　腕を失う、というのは……痛いのだろうか。そんな事をふと考える。腕をなくしたこのケーキはら悲しんでいるのだろうか。それとも、怒っているのか？分からない。けど、食べる。だって、美味しいんだもの。だから仕方ないでしょう？ケーキの胸をごりごりとフォークで削る。

　仮に、ね。このケーキが悲しんでいるとしても、私には関係ないわ。私は私の好きにするだけ。

　甘い味が、口いっぱいに広がる。ああ、美味しい。ああ、美味しい。そう呟いて、私はケーキに小さく笑いかけた。嗤いかけた。嘲笑した。

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