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学校からの帰り、私はアズリエルに話し掛けてみた。勿論、フィーとサリエルがいないのを見計らって。
「アズリエル、あなたとサリエルっていつから……そうだったの?あ、えっとね。その……病気、いつからなっていたの?身体、痛かったり、するの……?」
アズリエルも病気らしかったから。もしかするととても痛がっているかもしれないと思ったの。けど、今までそれを訪ねなかったのはなぜだろう?アズリエルやサリエルが病気だという事を意識していなかったからだろうか?だって、いつも二人は元気そうだったから。
「えー?急にどうしたよスージー」
「ううん……ちょっと気になっただけ。病気、いつからなったの?それに……痛く、ないの?だって、血が……」
「大丈夫だって!そりゃ、他の皆ほど運動できないけどさ。けど、そこまで痛くもないし、むしろ皆が優しいから得だな、なーんて!」
アズリエルはそうちゃかす。けらけら笑いながら。でも、私はちゃんと見ていた。アズリエルが喋るたびに覗く口内が、不自然なくらいに赤かった事に。
だが、それを指摘したところでどうなる?
彼がちゃかしたのは……多分、私を心配させないためだろう。アズリエルはそんなやつだ。平気な振りをして、たくさんの事を抱え込んで、悩んでしまう。それを話してくれれば良いのに、力になりたいのに、彼はそれを許さないのだ。
言わない方が良いのだろう。彼はそれを望まないのだから。だから私は安心した振りをして、笑うだけで良いのだ。
「そうなの?なら良かったわ」
視界の端に、揺れる若葉が映る。ぬるい風が三つ編みを揺らすのを押さえながら、微笑んでみせた。
「そういえば、もう六月よね。段々暖かくなってきたし」
「もう六月かー……卒業式もすぐそこだな。スージーは進路とかどうするんだ?」
「やだぁ、思い出させないでよ!まったく考えてないのにさぁ」
「おい、嘘だろ?もう卒業式なんだぜ?オレだって考えてるってのによ」
面白くて、二人して笑って。私の冗談でこんなに笑ってもらえた事はそうないわ。そんなに面白かったのかしら!
笑って、笑って、笑いすぎて。アズリエルが口から血を吐いて。彼はそれを隠すように、口元を強く拭う。私はそれに気づかない振りをしながら、笑い続けた。
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レモネイド - これは名作の気配。続きを期待。 (2019年8月23日 16時) (レス) id: a343b5b023 (このIDを非表示/違反報告)
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