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「おねえちゃん!」
しばらく、その施設で暮らしていた。見てくれは病院というよりは介護施設のようだったけど、私に割り当てられたのは、ごく普通の部屋だった。フローリングの床とクリーム色の壁紙が、暖かい印象を与える。病室特有の薬品臭や、ひんやりとした空気は感じられない。
そこで三日ほど寝泊まりした頃、私はフィーと再開した。フィーは私を見るなり目を輝かせて、抱き締める。
「もう、フィーってば。相変わらず甘えん坊ね。お姉ちゃんがいなくて、そんなに寂しかった?」
お姉ちゃんぶって、フィーを抱き締め返す。本当は、私もフィーと同じ気持ちだった。独りぼっちで、わけの分からないところに連れてこられ、不安だったの。けど、それを口に出すのは、恥ずかしかった。
少しの間そうしていると、やがてフィーはゆっくりと身を離した。
「おねえちゃん、なにがあったのかな?わたし、よくわからないの。おねえちゃんは、なにかしってる?」
「ああ、そうね……ほら、この前の夜、物音がしたじゃない?多分、泥棒が入ったのよ。きっとそう。もしかすると、何か盗まれたかもしれないわね」
「どうして、わたしたちはここにいるの?」
「泥棒から保護するためじゃない?壊されたドアとかの修理とかをする間、私達を預かってくれているとか」
「ふうん」
多分、そういう事だと思うの。私達がここに連れてこられた理由はね。フィーは頷いて、そしてふと尋ねてきた。
「おねえちゃん、さりぃちゃんたち、しらない?」
「サリエル達?知らないわね……フィーも見てないの?」
「うん」
サリエル達は……どこにいるのかしら。もしかして、二人に何かあったのだろうか。いや、さすがにそれはないだろう。二人は病気だし、もしかすると病院にいるのかも。
特に、サリエルは病気が悪化したって言っていたし……。
「それより、おねえちゃん。ねえ、おてがみみせてよ!せんせいにね、おはなし、きいたの。おねえちゃん、おしごとにつけたんでしょ?」
「ああ、そうね。けどやっぱり、しばらく出社できないのよね」
「そうなの。ざんねんだなぁ、おねえちゃんのすーつすがた、みたかったのに」
小さく笑って、フィーのほっぺを撫でる。むにむにとした肌触りが、素敵。あったかくて、心が落ち着く。
「いつになったら、ここをでられるのかなぁ?」
「きっともうすぐよ」
そうであってほしい。
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レモネイド - これは名作の気配。続きを期待。 (2019年8月23日 16時) (レス) id: a343b5b023 (このIDを非表示/違反報告)
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