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「大きな音がして、怖かった……妹と一緒に眠ろうとしたんですけど、すぐに起きたんです。外の様子が気になって、見たら、あのどろどろがあって……」
しばらくして、私は、よく分からない施設に連れてこられた。警察署、ではないだろう。どちらかというと、病院のようであった。
目の前の椅子に座った男性は、笑顔でうんうんと相槌を打っている。けど、私にはその笑顔が、機嫌を取るようにやってるとしか見えなかった。うつむきながら、ぽつぽつ話す。リノリウムの床に反射する私の顔は、どこまでも無表情。
「玄関のドアと、キッチンの窓が壊れてました。どろどろがそこでなくなってたから、きっとどろどろのやつが壊したんだと思います」
「そうかい。ところでスージー、質問しても良いかい?先生についてなんだけど……何かなかったかい?些細な事でも構わないから、教えてほしいんだ」
「先生ですか?先生は寝てましたよ」
「アズやサリィの様子で、変わった事は?」
「なかったです。二人は病気で、あまり運動とかできなかったけど……そのくらいですよ?ああ、でも……サリエルは最近、病気が悪化したって言ってました」
「フィーは?」
「特に、何も」
「そうかい」
いくつかの質問の後、男性は黙る。そのまま、さらさらと手元のクリップボードに何かを書き込んでいた。
沈黙が、部屋を満たす。
「……あの」
耐えられなくてもなって、声をあげた。先生がこちらを見やる。私は、その視線をなるべく感じないように、目を伏せがちにして。
「皆は、どこですか?フィーは、アズリエルやサリエルは?私はどうして、ここに連れてこられたんです?」
男性は黙ったままだ。沈黙が嫌で、私はひたすらに言葉を紡ぐ。
「ドクター、教えてください。私、怖いです。わけも分からないままに、いきなり連れ出されて。妹はどこなの?あの夜、何があったの?」
「それは」
黙っていた男性が、口を開く。
「まだ知るべきではないね。けど、安心してほしい。君の妹や友達は無事だよ」
「……」
わけが、分からない。
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レモネイド - これは名作の気配。続きを期待。 (2019年8月23日 16時) (レス) id: a343b5b023 (このIDを非表示/違反報告)
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