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第五十一話 スザンナ ページ5

「……っあ“」

 わけが分からないまま、冷たい床に叩きつけられる。小さな悲鳴をあげる。口から、何かが飛び出した。胃の中身なのか、それとも喉の皮膚がはがれたものなのか。

 何者かに攻撃されたみたいだけれど、痛みでうまく考えられない。苦痛に呻く事すらできなかった。呼吸をするたびに、喉に激痛が走ったから。

 全身から、血が流れていくのが、分かる。

 私は、このまま死ぬのだろうか?まさか、そんなはずないわ。他の社員もいるはずだし、侵入者も捕らえられるはず。

 ……そういえば、ここ、どこなのかしら。しばらくすると、そう思考する余裕ができてきた。侵入者は、おやつ、がどうとか、言っていたけど。

「……おねえ、ちゃん?」

 ?

 声が聞こえた。社員のものではない。舌っ足らずで柔らかな、まるで子供のような声。私は、この声に聞き覚えがあった。

「……フィー?」

 痛みを堪えて、呟く。本当に小さな声だったけれど、彼女には聞こえたらしい。安堵するような息を吐いている。彼女がいるという事は、ここは、被験体の、収容室?

「おねえ、ちゃん……どうした、の?」

 心配しているのだろうか。フェシリアはそんな事を言いながら、私の頬に触れる。ひんやりとした長い指。それが動くのを、私はぼんやりと眺めていた。

「フィー、今、お部屋から出たら……駄目よ。悪い人が、いるから……怪我、しちゃうわよ」

 彼女を他人に傷つけられたくなかった。彼女を傷つけて良いのは、私だけだから。彼女を愛して良いのは、私だけだから。だから、そう言った。

「おねえちゃん、みたい……に?」

「そう、よ」

 良い子ね、と微笑んでみせると、フェシリアは嬉しそうに笑った。それを見て、私も嬉しくなる。もう、ここで死んでも良いような気がした。愛しい妹に最期を看取ってもらえるのだから。彼女の腕の中で死ぬ事ができるなら。

 それで、良いような気がした。

「ねぇ……おねえ、ちゃん」

 あら。フェシリアは、何かを伝えようとしているわ。もしかすると、私が死にそうな事に、気がついているのかしら。聞いてあげようと思って、耳を澄ませる。

「あのね、わたし……ずぅっとずっと、ね……」

 彼女は、耳元で囁く。何だかくすぐったい。そのせいなのか、ぞわりと鳥肌がたっている。

「おねえちゃん……たべたかったの」

「……え?」

 その言葉の意味を理解する前に。

 私の右目を、すさまじい痛みが襲った。

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白雪の鴉亭(プロフ) - 更新終わりました。短くてすみません。 (2019年4月4日 18時) (レス) id: 033af8111d (このIDを非表示/違反報告)
白雪の鴉亭(プロフ) - 昨晩は本当にすみませんでした。小説を更新します。 (2019年4月4日 17時) (レス) id: 033af8111d (このIDを非表示/違反報告)
嵩画@多忙(プロフ) - 終わりました。お話を追加しようと思ったのですが、文字数の関係上一話では収まりきらないと判断しましたので続編の方に書かせて頂きます。 (2019年4月4日 1時) (レス) id: 3b71435c15 (このIDを非表示/違反報告)
嵩画@多忙(プロフ) - 更新します (2019年4月4日 1時) (レス) id: 3b71435c15 (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年4月3日 16時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミクミキ x他9人 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2019年3月27日 21時

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