フォボス症候群２ (ページ40)

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第八十五話　ミランダページ40

「……？」

　変だわ。道に転がっていたものを眺めて、そう思う。人間の死体。けれど、奇妙な死に方をしているの。近寄って、よくよく眺めてみた。

　誰も彼も、顔がない。顔面を溶かされているようで、骨すら見えない。気持ち悪い死に方。そんな事を考えながら、私は立ち上がる。

　その現象を巻き起こして奇妙な生き物だった。ナメクジのようだけれども、節足動物みたいな腕が大量に生えていて、口のような穴にはびっしりと鋭い牙がずらりと並んでいる。そいつらはこちらに気付くと、ゆっくりと迫ってきた。

　生理的な嫌悪感がするわ。気持ち悪い！眉をひそめる。早く逃げないと。私に戦う力なんてないもの。あんな生き物に殺されるだなんて、嫌よ！

　あいつらの動きは遅かったから、どうにか逃げおおせて、ため息をもらす。真冬は無事なのかしら？心配だけど、今はそれより先に、自分がどうすれば生き延びられるのかを考えるべきよね。

　しかし、あの生物はいったい何？あんなの、この地域に生息していたっけ？何かの突然変異？だとしたら物騒よ。警官は何やってるの？

　でも、妙ね。他の人はどうして、あんなのろまなやつに殺されちゃったのかしら。そう思っていると、唐突な吐き気に襲われて、嘔吐く。何だか、気持ち悪いわ。目の前がぐらぐら揺れるし、うまく歩けない。

　どうして？どうしてなのかしら。頭がぼんやりしてくる。私の身体、動かない。そのまま倒れ込む。地面に叩きつけられて仮面が割れ、眼球に突き刺さる。痛いなぁ。

　あら、いつの間にか、さっきのナメクジ。ぬるぬるしてる。ナメクジの吐息がかかる。そのくらい近く。すぐすぐそばに。

　いいにおい。ちのにおい。おちつく。もっとちょうだい。はがぎらぎらしてる。きれいあかいたべられるごめんなさいまふゆわたしたべ