フォボス症候群２ (ページ26)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:5,909 hit

第七十一話シエラページ26

「……………あ」

突然の爆発音と、大きな揺れ。

に、よってこぼれる楽しみにとって置いたプリン。

「………はぁ???」

…ぁあ、いかんいかん。総帥としての威厳やら諸々が崩れてしまう、と何度周りから言われたことか…

それにしても、今のは何の揺れだ？
爆発が起こる場所なんて、地下の実験室しかない。
我が部下は優秀だろう、揺れが起こるほどの爆発なんて起こさない…はず

まぁ、誰か報告に来るだろ………

「そ、総帥殿!!!!大変です!!!!」

そう言ってノックもなしに駆け込んできたのは…
…誰だ？服装からして警備員だろう。

「ちっ、地下の生物兵器のカプセルが、何者かに破壊されました!!!!!!」

その時久々に、俺の目が見開かれた。

「危険です！お逃げください!!」

「………………早急に犯人を捕らえろ。生物兵器も殺すな、生きたまま捕まえろ。」

「了解致しました!!」

警備員はそう言って慌ただしく去っていった。

……マコト･イクサビ。
恐らく、そいつのせいだろうな。
そいつがどんなやつなのかも俺はよく知りもしないのに、そいつは俺が今まで築き上げてきたものをいとも簡単に崩してみせた。
俺が築いたこのカンパニーを。俺が愛したこのカンパニーを。

「………くっははははははははは！」

社員達はきっと、この町のため…戦うのだろう。
きっと社内に留まらない。町中…下手したら国だって動く。

どう転んでも、無理じゃないか

俺は、築いたものが。自分のものが。
…愛したものが壊れていくのを目の当たりにするなんて到底できっこないな。
きっと俺は、誰よりも弱虫だった

いつものコートを羽織り、総帥室の大きな扉を半ば体当たりするように開け、そのままふらりと廊下を歩く。

ドアを何個か挟んだ、とある壁。の、少しの隙間。

そこにカードを差し込む。

電子音と共に、壁が開き、階段が現れた。

一段一段降りる事に、自分の中で後悔が渦巻く。

「………いや、違うな」

後悔じゃない。
負けるのなんて、分かってた。

悪の製薬会社の総帥。

そんなもの、正義のヒーロー(WPS)に裁かれる運命に決まってるだろ。

せめて最後まで、お前らの中で「格好いい総帥」
のままでいさせてくれ。

ふらりとした足取りで、コートを翻し裏口から出る。
ビルからは煙が立ち上っていた。

これからどうしようか。
幸いなことに金を失った訳では無い。

卑劣で、狡くて、外道

だからなんだ？それが与えられた台本だったんだ

最後まで、悪役で居続けてやる