フォボス症候群 (ページ38)

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第三十七話　スザンナページ38

「サァ！早く答えるんだ！！！」

　少し、考える振りをして。私は、彼の言葉に頷いた。

　それだけの条件で利害関係を築けるというのなら、容易い事。考えるまでもなかったわ。即答したかったけど、わざとそうやって、時間を稼いだ。

　そうしたのは、覚悟がしたかったから。この人間と関わる覚悟が。

　この人間は、どこか異常な気配がした。友人の言葉を借りるなら、『嫌な予感』って感じかしら？少なくとも、善良な性質ではなさそうだった。

　それに、失敗すれば、危ういのは私だけじゃあなかった。妹のフェシリアも、道連れにしてしまうかもしれなかった。

　けれど。ここまで来てしまったからには、もう後戻りはできない。選択肢なんて、既に存在していない。ならば、私はそれを受け入れるのみ。

「……もちろんよ」

　笑顔を浮かべてみせた。同意するかのように。まるで、敵対する意思はないかのように。

　こうなったからには、徹底的にやるしかない。彼らをこちらに引き入れる。言い方を変えれば、籠絡する。私の得意技。数多くの異性を虜にして、裏切って、始末する。そうやって、この地位を得てきたのだから。今回も、同じようにするだけよ。

「けど、そうねぇ。あなたには、私の恋人になってもらうわね」

　そうした方が、向こうでは動きやすいわよ？不思議そうな顔をしていたから、そう説明した。向こうには、既に私の駒になった人間が多くいたから。その駒に紛れたら、動きやすくなるわよ？

「……おっし！契約成立だな！」

「そうね。よろしくねダーリン」

　歓喜するかのように腕を振り上げる彼を眺めて、私はそう呼びかけた。