フォボス症候群 (ページ36)

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第三十五話　フィリアページ36

「……変ネ」

　スージーからの連絡が、ここ最近ない。以前はたまに会ったりしていたのだけれど、それもなくなって。そういえば、妹のフィーちゃんとは、もうずっと会っていないわ。何やら、フォボス症候群に感染してしまって、治療のために出られないのだとか。

　お見舞いくらい行かせてほしいのに、スージーはそれをいつも拒否していた。相当危険な状態らしい。確かに、フォボス症候群は人間の身体と心を歪に造り替えてしまう。けれど、アタシは不信感を拭えなかった。

　スージーは、何かをアタシに隠している。

　そんな事ばかりを考えてしまうようになった。しかし、そう考えるのは良くない。アタシは、友人を疑いたくなかった。

　もちろん、もしもスージーがアタシに隠し事をしていて、それが法に反するものであれば、アタシは良心に従って、それを通報できる、はず。

　……。

　本当に？

　分からない。だってアタシ、既に知っていたんだもの。スージーが、生体兵器の開発に手を貸している事を。それを、誰にも言ってない。

　友人を見捨ててしまいたくないから？

　離れていってほしくないから？

　分からない。アタシは心優しい人間でいたいの？多分、違う。失望されたくないんだ。失意の眼差しを受けたくないんだ。だから、目を逸らしているのだわ。

　もしかすると、アタシはまだ、目を逸らしている？他の何かから。そんな気がする。けれど、何から？

　考えたくない。

　ただでさえ、騒がしいのに。これ以上悩み事なんて、抱えたくないわ。