フォボス症候群

第三十二話　ミランダ ページ33

不愉快でしょうがなかった。

　仮面を指でさすりながら、そう思う。まあこうなってしまってから不愉快でなかった時なんて一度もなかったけど。でも、今日はいつも以上に嫌な気分だわ。

　皆どうして、私を見るのかしら。私の事を、認識しようとするのかしら。

　あーあ、こうなるんだったら、やっぱり家の中で大人しくしておいた方が良かったわ。今すぐにこいつらを焼き払ってやりたくなる。きっと見事な火柱を上げる事でしょう！愉快なバーベキューパーティーなんてのも悪くはない。少なくとも、私の気分はましになるわ。

　最近は人が増えて、本当に嫌！遠くにそびえ立つビルを眺めて、そう考える。

　昔は、ここもただの田舎町だったのに。あのビルが立ってから、途端にたくさんの人間が移り住んできた。

　ああ、不愉快だわ、不快だわ！

　腹立たしい。苛々する。人間が増えるだけでも憤懣やるかたないのに。私は細く息を吐いた。高ぶる感情を抑えるように。

　まるで、獣のように。醜い怪物のように。

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