フォボス症候群 (ページ29)

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第二十八話クランクハイトページ29

執務室にて、部下の報告を聞いたオレは、気がつけば机にあった電気スタンドを目の前の馬鹿に叩きつけていた。絨毯と備品の買い替えという面倒な案件が増えてしまった事に腹が立つが、もう起こってしまったことは仕方がない。それよりも重大な問題は山積みだ。

「クソ共が……カンパニーにはオレと総帥殿を除けば低脳と人間以下しか居ないとは分かりきっていたが、まさかこれ程までだったとはな……」

一体、どうして急にこんな事態になったんだ？

先ず第一に、カンパニーのセキュリティを破った。偏愛研究者(スザンナ)によると「只の悪戯だから自分がどうにかする」との事だったが、悪戯でも一度セキュリティの穴を見つけられてしまったらそこから綻びていくのは明らかだ。システムの再構築は…オレがするしかないだろうな。無能どもに任せた結果がこのザマだ。

問題はまだある。WPSの連中が政府と手を組んでカンパニーの悪事を暴こうとしていると聞いた。例のクラッカーとの関連は不明だが、金にも恐怖にも靡かない連中は何処にでもいるらしい。

「……どいつもこいつも、オレの仕事を増やしやがって……」

何より不愉快なのは、アル中戦闘狂(ミドリ)の事だ。
先程、廊下で総帥殿と歩いていたのを見かけた。奴はオレの存在に気づくや否や即座に目を逸らし、オレと目を合わせまいとしていた。

ヤツは何を隠している？

一体ヤツは何を恐れている？

実に業腹である。
しかし此処で燻っていても何も解決はしやしない。
ひとまずオレは、社員に部屋の掃除を命じて地下研究所へ向かうことにした。オレの精神的療養の為に被験体を幾らか潰しても問題はないだろう。