フォボス症候群

第十八話　マーガライト ページ19

「……あら？どこにいるの？」

　いない。私の子供が、いない。さっきまで、そこにいたのに。どこに行ってしまったの？不安になって、あたりを見回した。けれど、どこにもいない。

　大変、はぐれてしまったのね。探さなきゃ。

　あの子は怖がりさんだから、きっと、ひとりぼっちで泣いているわ。可哀想に、そんなのはだめよ。待っていて、私の可愛い坊や。お母さんが今、助けに行きますからね。

　近くにいた何かが、動いた。私に絡みついてくる。やめてちょうだい、動きにくいわ。それに、大声で叫ぶのもやめて。

「マーガライトさん！落ち着いてください！マーガライトさん！」

　うるさいわねぇ。邪魔をしないでちょうだい。けれども、邪魔者は、私に拘束具をつけてくる。そんな、やめなさい！必死に抵抗した。私の坊やを、探しに行けないじゃないの！迷子になった、哀れな坊やを！

「マーガライトさん、あなたのお子さんはもう……マーガライトさん！落ち着いてください！」

　坊や、坊や、どこにいるの？お母さんはここにいるわ、返事をして？ねえ、どうして答えてくれないの？私はあなたを愛しているのに。どうして答えてはくれないの？

　拘束具をつけられた腕を振り回して、邪魔者を吹き飛ばす。壁に激突して、動かなくなった。死んだのかしら。なら都合が良いわ。

「坊や、坊や……ぼうやぁああああ……？」

　叫んでみても、坊やからの返事はなかった。けれど、大丈夫よ、坊や。私が助けに行きますからね。

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