ミットに球を叩き込め！〜ダイヤのA〜 (ページ1)

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1球目！ページ1

背中が、ジリジリと焼ける。肩が重い。
今日の最高気温は、35度。
久しぶりの猛暑日だが、多分これは違う。
降り注ぐ、『責任』と、『視線』によるものだ。
「おいおい、マジかよ〜、あの、アジアボーイ」
「今、何キロでたよ」
「159キロ」
・
・
『狂ってやがるぜ』みんなが、口を揃えてそう言った。

アメリカ、ロサンゼルス州のリトルシニアチームの集う大きな大会の地区大会、準決勝。
1回戦、準々決勝と、優勝候補の強豪にコールド勝ちをした、無名のチーム『ライオンズシニア』には大きな期待がかかっていた。
1回戦、弱小との試合だからと、人は疎で居ても、相手の応援席に座っていた。
だが、その試合を見た奴がインターネットで拡散したのだ。
『ライオンズには悪魔がいた』と。

次の試合は、早々にチケットが完売した。
その試合は、対して強豪では無かったが、またもやコールド勝ち。
その、快進撃はいつまでも続き、今日に至った訳だが、なぜ急にこのチームが強くなったのか。
それは、誰から見ても明白だった。
『絶対的エース』が、現れたからだ。

「今大会、0失点。奪三振、一試合30、防御率0.53、打率は、7割越え。ホームランは、最高、一試合で4本も打っている。盗塁防止力も高く、球速は、最高160キロをマーク…、どうして、こんな選手が、うちに見学がしたいなんて…」

そう、昨日の12時ごろだっただろうか。
青道高校野球部に突如かかってきた、国際電話。
そこから、放たれたのは、高めの綺麗な男の子の声だった。

「すみません、私、白織Aと言いますが、青道高校野球部のお電話でお間違えないでしょうか」

間違えないです、と短く返すと彼は嬉しそうな声でこう言った。

「私、今、アメリカのリトルシニアで野球をしているのですが、来週には日本に帰国することになっていて…、是非、青道高校さんで野球をさせていただきたいのです」

と言い、見学ができるか、と、勢いよく聞いてきた。

「えぇ、大丈夫よ。再来週でいいかしら」

私がそう返すと、彼は心底安心した声でお礼を述べていた。
後から、彼を検索すると、こんなサイトが出てきたのだ。
『アメリカ、リトルシニアライオンズに突如現れた「野球の申し子」』
下にスクロールすると、彼の名前、そして試合成績が出ていた。

「白織…、A、なに！？この成績はっっ」

私は、思った。
なんとしても、彼を逃してはいけない。