さよならの香り (ページ13)

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香りページ13

居酒屋でのユナちゃんの発言にモヤモヤしながら重い脚を引きずりながら帰り道を歩く

『Aちゃん“も”このへん住んでるの？』

『私は違うんだけどね』

…ユナちゃんは誰かに会いにわざわざここまできたってこと？

ジフナからのカトクを思い出す

たまたまだと思いたいけど…だとしたらここ最近のジフナの上の空な感じにも納得がいく

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ジフン Aと書かれた札がかけられている扉の前に立ち深呼吸をする

心なしかいつもより重い気がする扉を慎重に開き
小さな声でただいまと呟く

「A～遅い～」

「わっびっくりした。帰ってたんだね」

酔っ払ってるのかふにゃふにゃの笑顔で
ジフナがドアの音に反応して玄関まで迎えにきてくれた

家にちゃんと帰ってきてることに少し
いやかなり安堵する

「飲んでたの？」

「うん～、久しぶりに再会した友達に飲まされた～」

久しぶり、友達、というワードに過剰に反応してしまう

「遅くなるなら連絡しろよ～。寂しかった」

「……ごめん」

いつもは酔っててもそんなこと言わないくせに
なんで今日に限ってそういう事を言うの？

素直に喜べず色々なことが頭の中をぐるぐると巡る

すると前方から何か温かいものが私の両頬を包み込む

その瞬間、居酒屋のトイレでの事がフラッシュバックした

ユナちゃん…！

「っ！やだ！」

反射的にジフナの手を振り払ってしまう
私が拒絶するなんて思わなかったのかジフナは眉をひそめて傷ついた顔をした

「…俺風呂入ってくる」

なんで、なんで、そんな顔するの？
私ジフナが分からない

その場にしゃがみ込むと同時にジフナのケータイが震える

「今日はありがとうね」

画面に映し出されたのは、紛れもなくユナちゃんからのメッセージ

目頭が熱くなり視界が歪み出す

追い討ちをかけるようにまた同じ送り主からの通知

ぼやけてほぼなにも見えない状態でジフナのケータイをそっと画面が下に向くように閉じた

私の目から溢れた大粒の雫は頬を伝い手の甲にポトポトと落ちてくる

機嫌がいいのはユナちゃんに会ってたからなんだね

やっぱりそうだったんだ
一瞬でも安堵してしまった自分が憎い

ちょっとでも気が抜けた後に
現実を突きつけられると余計に辛くて仕方がない

シャワーの音に掻き消されるとは思うけど
念のためクッションに口を押し当てて
声が漏れないようにうずくまった