夏仔の日 /「囚人」 ページ1
※ルカ生誕祭に合わせて書いたもの
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「ねえ、ルカ」
ゲームがない、ある日の午後。半分だけ開いたカーテンの隙間から穏やかな日差しがこぼれる、いつもの彼の部屋。真剣な顔で作業机に向かう彼の意識が、ようやく私と同じ世界に戻ってきたらしい時を見計らって、名前を呼んだ。
「……ああ、君。いつの間に。来てたのか」
「うん。だいぶ前にね」
「それなら声をかけてくれればよかったのに」
「かけたよ。なんならノックもした。返事がないから勝手に入ったけど」
「そうだったのか？全く気がつかなかった」
しれっとそう言うルカに、呆れる気ももはや起きない。いつも通りだ。いっそ、愛おしいほどに。彼の頭の中は、永遠に動きを止めない機械のことで占められていて、そこに私が身を置く余地はない。……はず、なのだが。自分がこの人の恋人であるということを、私は今も信じられないでいる。ルカのことは好きだし、ルカも私を好いてくれているとは思うけれど。やっぱり、発明に夢中になっている彼の気を引くのは至難の業らしい。
「それで、私に何か用か？」
「用、っていうか……これ、食べるかなって」
私は、本や図面が無造作に広げられたテーブルに置いたトレーを指差した。その上には、一切れのケーキが乗った皿と、ティーカップがある。
「さっきのお茶の時間に出たやつ。ルカ、食堂に来なかったから。届けにきたんだけど」
「ああ、わざわざすまない。私はよかったのに……と、言いたいところだが。たしかに、頭を使って糖分が欲しくなったな。ありがとう」
彼がそう言ってくれて、少し安心する。いらないと言われたら、いや、その前に、彼の集中力が途切れなければ、私はまたトレーを持ってとぼとぼと引き返していたところだった。紅茶は少し冷めてしまったが、それくらいは許してほしい。
作業台に積んだ分厚い学術書の上に皿を乗せ、ケーキをフォークの先で削っていくルカを眺める。クリームをまとった白い三角柱が崩れるのを見ながら、私はまた口を開いた。
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KV(プロフ) - ゆずとぽん酢さん» 初めまして、コメントありがとうございます。イタカくんのお話はどれも好きな感じに書けたものばかりなので、そう仰っていただけてとっても嬉しいです…！不定期ですがこれからもちまちま更新していきますので、お付き合いいただければ幸いです。 (4月26日 21時) (
レス) id: 77374e0db2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずとぽん酢 - ま〜、、、本っ当に最高な短編集だことッ！作者様この度は素敵な作品を書いてくださりありがとうございます!!私は特にイタカくんの話が好きです!!! (3月28日 0時) (レス) @page16 id: 55c4e71bc7 (このIDを非表示/違反報告)
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