続き ページ12
「え?嘘?」
張り詰めた空気をぶち壊すような呆けた声。
予想外の返しに驚く。
嘘だぁと言いながらその人が後ろを向く。私も向く。相変わらず鳥居の先は森に塞がれ道はない。
「ホントじゃん。どっから来たの?何しに来たの?」
浮遊していた体を地面につけ、ささりと服装を整えた彼。
『何とも、気がついたらここにいました。貴方は…』
「俺はたらこ。ここら辺を守ってろって言われた狐の妖怪だよ。」
狐の像にもなれるんだよ、と笑いながらゆらりと尻尾を揺らした。ついでに耳もピクリと動いた。
「ん〜〜〜〜〜!!、帰り道がないから俺も分かんないや。いつか道が開くと思うからゆっくり行こうよ。」
ほらこっち行こうよ、と手を引かれる。
『えっ』
あっさりと話が終わってしまう。
このままよくわからない所に行くのもちょっと嫌だ。
『誰か…上の人とかに聴くとか出来ないんですか』
一歩止まって聞いてみた。
ピシリ
亀裂が入るような変な音がした。
そしてたらこさんの笑顔が消えた。
一気に空気が重くなる。
空がやけに暗くなった。
烏の鳴声が聞こえてきた。
「帰りたくないんでしょ。神隠しのせいにしとこうよ」
何故か分からないが周りの音が遠退いている気がする。彼の声しか耳に届かない。そんな気がする。
「名前。何て言うの?」
答えてはいけない気がした。けどもう遅かった。
『A、です…』
「そっか。じゃあA、俺と一緒に行こうよ」
彼は笑った。嫌な笑いだ。
繋がれた手はもう解けない。
風が吹いた。木々が揺れた。これが最後の景色。
読んでくれありがとう。
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宗介(プロフ) - すいみん。さん» 自分で書いてて解釈不一致だったり遠回しな物言いだったりしていますがそう言っていただけて感謝でしか無いです。時間は空くし彼らへの記憶もどんどん抜けてっていますが更新し続けますのでお気楽に見てってくだされば嬉しいです (3月3日 17時) (レス) id: 9374b91c4e (このIDを非表示/違反報告)
すいみん。(プロフ) - 𝐼 𝑙𝑜𝑣𝑒 𝑦𝑜𝑢…大好きすぎます…小説の雰囲気がどストライクです…。無理なさらず更新頑張ってください🙇♀️💕 (3月3日 1時) (レス) @page22 id: f12e90341c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宗介 | 作成日時:2022年10月15日 18時