【第1話】バッドエンド ページ1
【夢主】
矢追 A 17歳
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部屋から見える街を眺めながら矢追は自分のことを考えた。
夜だというのに、街は明るく、騒がしい。派手なネオンや街灯が照り、どこを眺めても人ばかりだった。
矢追はベランダの壁に足を差し出し、『楽になれる』そう自分に言い聞かせるが、それが余計に動揺している証拠だった。
矢追の頭には昨晩観た映画の内容が残っていた。学校を終えた後、家で観たケーブルテレビの放送だ。監督名も知らなければ、題名も地味だった。
即座にチャンネルを替えようとしたが、どういうわけか気になり、気づくと最後まで観ていた。
両親をとある殺人事件で亡くした少年の短い人生を描いた話だった。
少年は、最愛の両親を亡くしたのにも関わらず、へらへらと笑っていた。
辛い事やイラつく事、どんなことをされてもなお少年から笑顔が消える事はなく、遂には、周りから見下されるようになった。少年は始めは笑い、そのうちに青ざめ、しばらくすると絶叫する。
少年は自分自身の心に絡まりついた紐をを切ろうと暴れ、結局、精神病院へ運ばれる。
映画の終わり、少年がベットの上で呟く。
「嘘でもいいから、自由に、してください。」
暗く、地味な内容だった。白黒映画であるはずなのに、少年の心理を表現するためか所々青い映像が混ざり、それが印象的だった。ただ、観終えると、妙に居心地の悪い気分になった。
まるで、自分のことを見せられているかのような、嫌な気分になったのだ。
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作者名:雑草 | 作成日時:2020年7月29日 22時