ねぇ三途くん《東リベ》《三途春千夜》

日常2〜過去編1〜 ページ4

私の家はお金がなかった。



貧乏だった。



でもそれも苦ばかりではなかった。



お金では買えない《愛》があった。



お母さんもお父さんも口癖のように毎日、毎日、「大好き」そう、言ってくれた。



沢山褒めてくれて、私の為に沢山働いて欲しい物もくれた。



いつでも私という子供を優先して、一番に考えてくれるいい親だった。



そんな親がある日、帰ってこなかった日がある。



その日、親は"私の為に"お金の取引をしたそうだ。



帰ってきたと思えば二人はボロボロだった。



膝や腕、顔から血が流れていた。



「これでもう貧乏な生活から抜けられるよ。名前のしたいこと沢山できる」



２人とも帰ってきて真っ先にいった言葉がこれだった。



その瞬間私は泣き崩れた。



私の、私の為だけに自らの身を滅ぼしてお金を得た。



この真実はどれだけ泣いても変わらなかった。



こんなに、こんなに血が出ているのにこんなときまで私の幸せを願ってくれる。



愛されて嬉しい筈なのに、それとは違う感情も芽生えていた。



やりたい事なんてもう心の中になかった。



この２人に幸せに生きてほしい。



『そのお金は、２人の為に使おう。』



そう言ってみたがダメだった。



「どうしても、名前には幸せに生きてほしい。その権利が名前にはある。」



そう言われた。



どういう事かわからなかった。



それと同時に、



２人をここまで追い込む私が憎くなった。

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