【ＱＫ】眠らない君を抱きしめて (ページ7)

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kwmr side

「お疲れ様」
そう言って福良が顔を出す。

「企画どう？」
「あー、ちょっと行き詰ってる」
「え、見せてよ」

福良は楽しそうに俺のパソコンをのぞき込む。少し企画の相談をしてから、俺は気になっていたことを聞いた。

「いきなり来てどうしたの」
「え、来たかったから」

時刻はもう十一時を回っている。こんな時間に仕事場に来たくなるもの好きはそうそういないだろう。

納得してないことを察したのか、もう一度福良が口を開いた。

「,,,俺さ、最近全然眠れないんだよね」
「え」
「なんか、１人で布団に潜ってても眠れなくってさ。で、確か今日河村が泊まるっつってたの思い出して来たわけ」
「福良もそうなんだ」
「『も』って河村も眠れないの？」

どうやら同じ悩みを抱えていたらしい。

「俺も最近眠れない。何でだろうね」
「さあ,,,でもさ、最近２人で話す時間あんまりなかったじゃん？お互い仕事とか出張で忙しかったし」
「確かにそうかも。じゃあ、２人でベランダで話そっか」
「え、何を？」
「企画とか、クイズノックの今後とか」
「,,,いいじゃん、それ」

２人してオフィスのベランダに出る。弥生の夜は空気が澄んでいて、風が心地好い。

暫くクイズノックについて語り合った。今度やりたい企画から、将来の野望まで、全部。

こんなにさらけ出して語れる相手を見つけられたのって、奇跡に近いんじゃないかな,,,

そんなことを考えていると、肩に重力が掛かる。福良が頭を乗せてきたのだ。

「今日、満月だね」
「あ,,,確かに」

空を見上げると、綺麗な円を描いた月が南中している。

「,,,綺麗だね」

隣の恋人が呟いた。月の光に晒されて、白くて整った顔が際立つ。

堪らなくなって、俺は恋人の体を抱き寄せる。そのまま頬にキスをした。

「福良の方が、綺麗だよ」

少し驚いたようだが、恋人はやがて顔を綻ばせた。

「,,,夏目漱石より、ロマンチックじゃね？」
「いや、どうだろう」
「福良さん手厳しい,,,」

そのまま月を見上げているうちに、なんだか眠たくなってきた。
隣を見ると、福良も目がとろけている。

「俺、眠くなってきた」
「奇遇だね、俺も」
「仮眠室いこっか」

ふらふらと仮眠室に向かい、自分の布団を敷く。

ふぅ、と息をつくと、横では既に布団に潜った福良がすやすやと寝息をたてていた。

やっぱり、一番綺麗。
一緒にいられるなんて、幸せだな。

俺も布団に潜る。自然にやってきた心地好い眠気に身を任せた。

Fin