【ＱＫ】眠らない君を抱きしめて (ページ9)

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kwkm side

今日はちょっとやりたいことがあって、こんな時間まで残っている。
時刻は午後十時。オフィスはすっかり人の気配がない、かと思いきや。

「うぅっ,,,」

隣の部屋からうなり声がしてくる。声の主は俺の恋人。
最近寝てないみたいだし、狂ったみたいに働いてる。なんか思い詰めてることがありそうな顔で。

最近は俺にも構ってくれないし、少しちょっかい出してみよ。

「伊沢さ～ん」

声をかけながら仕事部屋に突入するが、返事はない。というか俺が来たことすら気づいてないんやないか？

そのまま後ろに回り込んで、少し迷ったが思いきって後ろからハグをする。

とたん、俺の体も強く抱きしめられた。

「､､､かわかみぃ､､､」

伊沢さんが、泣いていた。

普段のCEOとしての顔や、お調子者の顔ではない。
プライドに押し潰されそうな、か弱い１人の人間がそこにいた。

「俺､､､このままでいいのかなぁ､､､このままじゃダメだよな､､､もっと、もっと頑張らないと､､､」

独り言のように呟く。その叫びは悲痛で、俺も飲み込まれそうだった。

自分を保つように、俺も伊沢さんを改めて力強く抱きしめる。

「俺は、今の伊沢さんが好きです。皆を纏めて士気を高めて、それでいてテレビも出て、かとおもったら凄い地味な仕事も文句言わず言って､､､頑張ってますよ。十分すぎるくらい頑張ってます。､､､だから、休んでいいと思います。今は、俺だって編集長だし、頼れる部分は頼って下さい」

「､､､ありがと､､､好き､､､」
「俺も、負けないくらい好きですよ」

どのくらいの時間抱き合っていたのだろうか。やがて恋人は愛の拘束を解いた。

「川上、今日泊まるの?」
「泣くほど追い詰められている恋人放置するほど、俺は薄情じゃないです。それに、最近かまって貰えてませんしね」
「やった」

伊沢さんの隣のデスクに座る。仕事の時間がこんなにも幸せなのは、いつぶりなのだろうか。

fin