ねぇ、藍してるんです (ページ3)

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姉も、狂藍＿1 ページ3

「……ただいま」

声をかければダダダダダっと階段を駆け降りる音がして、思い切り抱きしめられる
いつものことなのでそれがどちらの姉なのか…姿を見ずとも予想がついた

「茜姉さん……離して……」

「やだよ〜蒼良可愛いもん〜」

歳が八つ離れている双子の姉が自分に入る
二十四歳にもなって妹に抱きつく姉が藍川茜
真面目で医学部に入っている姉が藍川葵である

もうすぐ定期テストがあるというのに、このままではまた勉強ができないではないか

常に会長のことを考えている自分も、家の中ではこの馬鹿姉さんと勉強で精一杯だった
本来なら葵姉さんの部屋で勉強するのだが、留守の今日はそうもいかない
自力で茜姉さんを剥がし、自分の部屋で勉強しなければならないのだ
部屋の鍵だって姉さんが持っているのに

ぴょこぴょこと自分の髪で遊んでいる姉さんを上手く引き剥がし、階段を登る

定期テスト、ということは知っているのか珍しく茜姉さんは追いかけては来なかった
そのまま部屋に入り、カバンを定位置になおす
綺麗好きな葵姉さんのおかげで部屋は綺麗に保たれているので、参考書もすぐに手に取る

「……数学返してもらってない…………」

ここで気づいたのは痛恨のミスだった
廊下を歩いていればたまたま、知らない生徒が話しかけてきた
内容は数学の教科書を貸してくれというものだったが、なぜ自分に言ったのか今でもよく分かっていない
大方生徒会副会長、という名目なのだろうが返さないという選択肢は如何なのだろう

幸い今日はなかったが、明日は数学がある
名前も顔も覚えてない生徒をどうなれば見つけようかと悩んでいると、コンコンッとドアが鳴る
茜姉さんなのはすぐに分かったが、返事をする間もなくドアが開いた

「蒼良〜！なんか変な奴がいたよ〜？とりあえず絞めといたけど〜これ蒼良の教科書？」

「あ、数学……。昼間貸した奴だよありがとう姉さん」

扉の先には笑顔の姉さんと……頬の当たりが赤く腫れている同い年くらいの少年がいた
制服からうちの学校だと見受けられる
自分の教科書があることから、返そうとしてくれたのだと分かったが、なぜコイツが自分の家を知っているのか

そこまで考え、なんとなくこの少年が自分をストーカーしていたのだと予想する
といっても今まで視線を感じたこともないので、返そうにも返せず家に着いてきた感じだろう
そこをたまたま姉さんが見つけて絞められた、というところだろうか

我ながら恐ろしいと感じる