78勝 ページ38
晶がルナを迎えに教室にやってきた頃、ルナは至って普通のペースで中庭に向かって歩いていた。
彼女は、自分を呼び出している相手が1年生のサッカー部で、入学してから月に一度のペースで呼び出していることを知っていた。
『矢坂くん』
中庭の何度も来たことのある場所に、目的の人物を発見し、声をかける。ゆっくりと振り向いて笑う彼はやはり今年になって3度ここで見たことがある。
「ルナ先輩。俺、先輩の事が好きです。付き合ってください。」
『ごめんなさい』
しかし、ルナが知っている彼はデータ上のものだけ。
だから彼が最近危ない輩との付き合いがある事も知らなかったし、興味もなかった。いつもならすぐに退くはずの矢坂がニヤニヤ笑いながら近づいてくるのに、ルナは悪寒を覚える。
「あなた生意気だって言われません？せっかくこの俺が告白してやってるのに何度も振りやがって。」
腕を伸ばせば触れる程度に近づいてきた時、周りの茂みから高校生ぐらいの3人の男達が出てくる。
「その女の子？カワイーじゃん」
「俺らにもちゃんと味見させろよ」
「写真で見た通りちょー上玉じゃんか」
何かスポーツでもやっているのか、そこそこ立派な筋肉を持った男達が出てきた事に1人で納得したルナは、矢坂に話しかける。
『つまり、過剰な程自分に自信を持っていたあなたは私に何度も振られるのが許せなくて、こんな如何にもな汚らしくて短絡的な彼らに協力を求めたという事かしら。
貴方も彼らも、ちっぽけな男ね。』
実はこの五十嵐ルナという女。普段披露しないだけで煽りスキルMAXである。
「このアマッ!! 」と言いながら近づいてきた男1を振り返ると同時に、大きく足を振り上げて硬いローファーで顔を思い切り蹴りあげる。
『ああ、嫌だわ。ローファーが汚れちゃったじゃない。』
確かにルナのローファーには、男の鼻や口から吹き出た血がついている。つまり、この細っこい華奢な女の子が血が吹き出るほどの蹴りを放ったということである。
「調子に乗りやがって！」
『実力の差も理解できない野蛮人は頭に血が上ると勢いよく突進することしかできないのね。...だから利用されるのよ。これなら猿の方が余程利口だわ。』
向かってきた男2の勢いを言葉通りに利用したルナは合気道の技で転がして頭を蹴り、男3の鳩尾を回し蹴りで蹴り抜いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 157人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼月 | 作成日時：2021年6月9日 6時
