71勝 ページ30
「『ただいま』」
「おかえりなさい、颯くん、ルナちゃん」
いつも通り家に帰れば パタパタとスリッパをならして母に迎えられる。
約1ヶ月ぶりに会う愛しの妻の出迎えに、普段から感情を顔に出さない父が珍しく相互を崩してハグをする。チュッチュッ とキスをしている両親の横を何も言わずにすり抜けるのは日常茶飯事。
五十嵐家にとってこの程度のスキンシップは当たり前。父は母と娘が大好きで、母も父と娘が大好き。言うならば
☆
「これはアンナに、こっちはルナ。あ、これは皆で食べようか」
晩御飯を食べ終わった頃に使用人達によって運び込まれる箱。箱。箱。
嬉々として箱を開けていく父の姿に思わずため息をついてしまったのは仕方ないと思う。いつも通りの光景すぎてもう呆れるしかない。
大きな机に山ほど積まれた颯が買ってきたアメリカ土産。お菓子にコスメに、ブランドのバッグなど。服はサイズの問題もあるからここにはないけど、他の物は流石と言うべきか、ルナとアンナの好みど真ん中。
「旦那様、お荷物です。」
更に、輸送されてきた箱を開ければ日本では入手困難なスポーツメーカーのバッシュやバレーシューズ、バスケットボールにバレーボールなどなど。
投げ渡されたバスケットボールを指の上でクルクルと回す。ボールは新しい匂いがして柄にもなくワクワクしてまう。
『お父さん、後で1on1やらない?』
「ああ、もちろんいいぞ」
ルナにバスケを教えたのは颯である。ドリブルのつき方からシュートの仕方、1を教えれば10を理解する娘と共に何度1on1をやった事か。プロではなかったが中々の上手さを誇っていた自分が、どんどんと上達していく娘に勝てなくなって、元日本代表の友人を紹介した颯は悪くない(多分)
「あら、颯くんもルナちゃんも私を除け者にするなんて酷いわ」
「ぜひ君も見に来てくれ。君に勝利をプレゼントするよ」
『もう私の方が上手いけどね』
茶番をする父と母をぶった斬るようにして部屋から出ていったルナに、たまたま部屋にいた使用人はクスクスと笑ってしまう。
家族仲がいいのは当たり前。五十嵐家は家の人間と使用人とも仲がいい。時折一緒にゲームをする姿が見られるとか見られないとか...
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48勝と49勝の間に、3年生になったオリキャラ(ルナと晶)の設定を追加しました。
次話はようやく出てきた五十嵐夫妻の設定です。
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作者名:蒼月 | 作成日時:2021年6月9日 6時