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62勝 ページ21

コン コン コン
「失礼します」


もうあと数分で最終下校時刻になるという時、緑間は生徒会室の扉を叩く。

ルナは遅れてはいたものの、宣言通りに部活に参加してきた時はやはり人事を尽くしている人は色々と違うのだと思ったし、先程見回りの教師に見つかって怒られそうになった時にルナに呼ばれていると言えばあっさりと開放されたことは記憶に新しい。

この帝光中でルナは生徒からも教師からも異常なほど信頼を寄せられているのだ。



生徒会室の大きな木の扉を開けば、部屋の中央に置かれた生徒会長の席に座って書類に目を走らせているルナがいた。

緑間が来たことに気がついたルナが顔を上げると、腰まで届くような長いストレートの銀髪が艶やかに揺れ、長い睫毛に縁取られた翡翠が緑間を射抜く。

この1年間でこの人は飽きるほど見てきたはずだった。それでも毎度の事ながら初めて会ったあの時のようにその美しさに惹かれてしまうのは決して緑間だけじゃないだろう。


【ルナ?】

どこからか知らない男の声が聞こえ、ルナに声をかけようとしていた緑間の足はピタリと止まった。

この距離で声が聞こえるということは、スピーカーにして電話をしながら書類を片付けていたのだろう。それが、緑間が来たことで途切れたということか。

ルナは胸の前で片手で謝罪のポーズを作って、少し待つように示した。

〖ごめんオミ。もう少ししたら帰るから、それまで待っててくれる?話は後で聞くわ〗
【お前が言うなら別にいいけど。あ、今日の晩飯はお前ん家だってよ】
〖...そう。わかった〗
【あんまり遅くなりすぎんなよ】
〖わかってるわ〗


ルナは普段興味のない人には誰であろうと苗字呼びで、自分たちにしか渾名を付けているのを聞いたことがない。

だが、当たり前のように相手を渾名で呼び、しまいには夕飯を共にするという事は、相当仲がいいのだと緑間は推測した。それにいつも通りの無表情ではあるが、何処かその無表情も柔らかく見えた。

友人か、幼馴染か、それとも親族か...


緑間が思考を巡らせてる間にルナは通話を終えて扉の傍に突っ立ったままの緑間に歩み寄る。


『待たせてごめん』
「いえ、先に待たせていたのはこちらなので」

ルナは広い生徒会室の隅に設けられた応接用のソファに緑間を座らせて、自身もその向かいに座る。


『それで、話って?』
「赤司、それから灰崎のことです」


.

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作者名:蒼月 | 作成日時:2021年6月9日 6時

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