月の女神は勝利を誓う NO.2 (ページ18)

今日:7 hit、昨日:0 hit、合計:27,385 hit

59勝ページ18

.
東京の名門校、帝光中学校。私立である帝光中は色々と自由が多く、PCやスマホなど授業中でなければ自由に使っていい。

ルナは今まで主に部活や生徒会の時に使っていたが、3年になり晶や虹村とクラスが別れてからは授業と授業の間の放課をPCを開いて動画見ることに費やしている。

そして毎度の事ながら、用事は様々でも＿圧倒的に告白が多いが＿放課に訪ねてくる人もいるわけで、それを遮断するように音漏れゼロと定評のあるヘッドフォンをかけてPCに向かうのが常となっている。

しかし、その様子を見て声をかけずらい人もいる。

「どうした？誰かに用事？」

教室の扉の前で突っ立っている短髪の男子にクラスの女子が声をかける。

一応声はかけたものの、彼の用事ぐらい"そういう事"に慣れているクラスメイト達は理解していた。なぜなら、その手にいかにもな手紙を持っているのだから。

「あ、五十嵐先輩に用があって...」

ああ、やっぱりと慣れきって面倒くさがっていた者達が思うが、今はまだ4月。そんな事に慣れきっている事自体が異常なのだ。

「ヘッドフォンかけてるけど、肩をﾄﾝﾄﾝってすれば大丈夫だよ」

いかにもな男子に、女神と言っても差し支えないルナにボディタッチをしろと言う女子生徒。後ろから「机でもいいぞ〜」「気づかれにくいけどな」と助言するのはせめてもの情だ。

[オーライオーライ!!]
[レフトー!!]

白にピンクゴールドのラインが入ったヘッドフォンの中で、床とバレーシューズが擦れる音やボールの音、選手たちの声が入り乱れ、白と紫のユニフォームを着た男子たちが画面の中を動き回る。これは宮城県のバレーの強豪白鳥沢学園の練習試合。

今年白鳥沢学園に進学してすぐにスタメン入りを果たした牛島若利から送られてきたのだ。もちろん、監督である鷲匠からの許可は得ている。＿どちらかといえば「分析しとけ」と半ば強制ではある。

バスケの分析はマネージャーとしての仕事ではあるが、バレーの分析は半分趣味だ。だからこそ学校で見て分析することができるし、誰かが用事があればすぐに対応することができる為、ルナとしては楽である。

トントントン

視界の端に骨ばった浅黒い指が入り、机を3つほど叩いた。

クラスメイトに教えていた合図で、誰かがルナに用事があった時、授業が始まる時に教えてもらう為のものだ。

PCから顔を上げたルナは、目の前に立つ少年を見て少し驚いたようにヘッドフォンを首にかけた。