幻の最強 【東リべ】壱

40（2021.11.29 修正） ページ43

2005年

綾介から話を聞いた武道がタイムリープする数日前＿


『あ〜クソ暑ぃ...』

蝉がうるさい程に鳴く深夜の東京を、買い物袋片手に綾介と仁斗は歩いていた。


渋谷区の高級住宅地に家を建ててルームシェアしている2人は、身バレ防止の為にお手伝いさんなどは全く入れず、買い物なども自分たちで行く。

「バイクで来ればいいのに」
『うっせぇなァ。歩きの気分だったんだよ』

グダグダと話しながら歩く2人だったが、突然綾介がピタリと歩みを止めた。

「どうした？」
『なんか、声しねぇ？』

耳を澄ませば、ミンミンとうるさい蝉の鳴き声に紛れてか細く聞こえる声。

「...たす、けて...誰か...」

『おい、行くぞ』

ここで幽霊だとかお化けだという考えが一切無いところが流石、綾介と仁斗である。

その長い足で ﾀﾞｯ と駆け出して、声の発生源を探す。



「綾介、見つけた!!」

見るからに乱暴されたのがわかる女と、後ろ手に縛られて顔中を腫らした男。どちらも顔も、身体も血だらけである。

『仁斗は救急車呼んで、コイツらの身元探れ！』

見るからに男よりも重症な女に近寄って脈を確認、か細くではあるが呼吸は正常。頭から血をダラダラと流し、歯は折られ、左目周りには大きな青痣が残されている。

下手に動かすと不味いので、そのまま寝かせた状態で持っていたガーゼで頭を押さえ、気休め程度ではあるがTシャツを脱いで体を隠してやる。


「救急車はあと数分で来る。

それからこれを見ろ。近くに落ちてた。」


仁斗が差し出した携帯を覗き込むと、なかなかに綺麗な顔をした女と、パンチパーマの男。このボロボロの2人だろう。


『彼氏の逆恨みか？』
「いや、たまたま捕まえたって可能性もある。」

救急車が来るまでに少しでも情報を集めるために仁斗は ｶｺｶｺ と携帯を弄る。

「いや、ちがうな。愛美愛主(メビウス)って奴らがこの子使って男を呼び出してる。」

メール履歴を見ていた仁斗が1番新しいメールを綾介に見せる。

『てか愛美愛主(メビウス)って誰だよ。東京都内(ウチのシマ)で好き勝手やってくれやがって』


"一般人に手を出したら殺す"と明言している有罪(ギルティ)の縄張りで、手を出すだけにとどまらず乱暴した愛美愛主(メビウス)に綾介は青筋をたてる。


『おい仁斗、紅葉(くれは)に"愛美愛主(メビウス)を徹底的に潰せ"って言っておけ。それから、今のを傘下のチーム全部に伝達させろ』
「わかった」

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