幻の最強 【東リべ】壱

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東京都 丸の内

オフィス街に立ち並ぶ高層ビルの中で異質な存在感を放つ"和一會"本社の目の前に武道と直人は立っていた。

「でっっっか...」
「当たり前です。

"和一會"は日本が誇る大手大企業。1945年〜52年にかけて行われた財閥解体がなければ今頃"和一會"は財閥として名を馳せていたはずです。

しかし、その本質は未だ未知数。あらゆる業種に手を伸ばし、多くの子会社を統率している"和一會"ですが、会長を始めとした幹部の名は誰一人として公表されていない。過去で会えたこと自体が奇跡と言っても過言ではありません。」


綾介がこの"和一會"の会長であることを知ったのは本当に偶然だった。

マイキーが口を滑らせ、先日の敦の自死の前に言われた言葉でここに辿り着くことができたのだ。


過去に他に言うな(言ったら殺す)と言われていた武道だったが、そんなものはクソ喰らえ。ヒナやアッくん、ドラケンを救うためならなんだってしてやると意気込んだ武道は綾介に会ったこと、敦に言われたことを直人につたえた。




会社に出入りする人＿本社の社員か、用のある人＿に続いて意気揚々とデカいガラス張りの正面扉を通った武道だったが、すぐに直人に制され、ロビーの隅にある椅子に座らされた。

「それで、君は一体どどうやってその八神綾介さんに接触するつもりなんですか？」
「え？」
「ﾊｧ... 第一に、僕達はこの"和一會"の会長が本当に八神綾介なのかも知りません。そして、もし仮にそうだったとして、アポもなしに簡単に会えるはずがない。」

そう、相手は"幻"。姿も名前も出さず、東京のみならず関東を率いていた有罪(ギルティ)の総長だ。

「そ、そりゃそうだけど、こうでもしねぇと会えねぇd ((「失礼、花垣武道と橘直人で合ってるか？」

武道と直人は急に自分達に話しかけられ、驚いて話しかけてきた相手を見る。

シンプルな紺のスーツにワインレッドのネクタイを締めた30代程の男が座っている武道達を見下ろしていた。

「そうですが、貴方は ((「俺のことはどうでもいい。それより会長がお呼びだ」

〚会長がお呼び〛
つまり、武道と直人は全く公表されていない"幻"と会うことができる。しかし、それは自分たちがなんの目的でここに来ているのかが誰かも分からない相手にバレているということでもある。


スーツの男は、武道と直人に ついてこい とだけ言うと受付をスルーして、社員用とは別の、鍵がないと乗れないエレベーターに乗り込んだ。

35→←33（2021.10.9 修正）

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