月の女神は勝利を誓う

19勝 ページ19

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3回戦
白鳥沢 VS 怒所 2-1 白鳥沢準決勝進出

試合終了の笛が鳴り、虹村や晶と共に応援に来ていたルナは勝者の白鳥沢に賞賛の拍手を、敗者の怒所に労りの拍手を向ける。

「佐久早たち負けちゃったね」
『まあ、シビアな世界だからね。勝てば次に進めて、負けた者は即座に場所を譲らないといけない』

観客席に座るルナたちの目には、負けて追いやられるかのようにベンチを空ける怒所の姿をがあった。

牛島若利と佐久早聖臣。各校のエースとして戦った2人は”サウスポー”と”手首の柔らかさ”という武器で正面から殴りあっていた。

『(この結果をオミはどう取るか…)』

自分以外にも似たようで違う武器を持つ若利をどう攻略するか、それが今後の鍵になるだろう。今年で中学を卒業する若利とまだ1年残っている聖臣。次にぶつかるのは最低でも2年後。


「ルナ、佐久早たちの所に行かないのか？差し入れ渡すって言ってただろ」

虹村の声で戻ってきたルナは、2人と一緒に怒所の元へ向かった。


☆


「ルナ、牛島若利のデータ頂戴」

最後の大会が終わった3年生に気を使っているのか、近くにいる人にしか聞こえない聖臣の第一声。聞こえた皆が苦笑する中で、ルナだけが真剣な表情だった。

『オミの言いたい事はわかるけど、一先ず身体を休めて。この話は家に帰ってからね』

聖臣は知っている。ルナの言うことは大体正しい。感情に振り回される事無く、ただ正論で理解を促す。

「わかった」

差し出されたスクイズを受け取り、口に含む。

「(あれがサウスポー。レシーブ強化はもちろんだけど、左にも慣れないといけない)」

「(ルナは両利きだから左でも打てるはず。流石にパワーは足りないだろうけど、左回転には慣れれるはずだ...)」


深雪からハンカチを返して貰ったルナは、1人で考え込んでいる聖臣を見る。

『(ワカのサウスポーは厄介。いつもと違う回転に体1つ分ズレた打点、そしてパワーの強さ。バスケだと両方使うから左打ちならできるけど、あのパワーは私には再現できない)』

『(ワカのデータを勝手に渡すのは出来ないけど、お互いが納得すれば問題ないよね)』

思ったが吉日と、〘後で話があるから、時間が出来たら電話して〙と若利にLINEを送る。

聖臣にとって牛島若利(サウスポー)が厄介なスパイカーであるならば、若利にとっても佐久早聖臣(手首の柔らかさ)は厄介なスパイカーであるということだ。

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