第九話 ページ10
ぽす。
何かが落ちる音がすると同時に、首の圧迫感が消える。
驚いて目を開けると、自分が誰かに抱えられていることがわかった。
顔を見上げる。
癖のついた黒い髪。半分で柄の違う特徴的な羽織。手には、光る日本刀。
その人にはとても見覚えがあった。
水柱、冨岡義勇……。
彼が助けてくれたんだ。辺りを見回すと、灰になりつつある、鬼の頭と体を見つける。
「……遅くなってすまない。」
ぽつりと呟かれたその言葉には、自責的な感情を含んでいるように感じられた。
「あ、謝らないでください……!助けてくれて、ありがとうございました。貴方が来てくれなかったら……私は死んでいました。」
悪いのは間違いなく私だ。いい夢を見れたことで調子に乗り、自分の意志でもう一度寝ることにした。そして、危険な目にあった。もし彼が現れなかったら。私はあのまま、鬼に食われて……。背筋がゾッと冷たくなったような心地がする。
冨岡さんは此方を一瞥すると、私を抱えたまま歩き出す。
「…………。」
「あの、何処に行くんでしょうか……。 」
「………家だ。」
冨岡さんの家に行くってことでいいのかな。
形容詞がないので、詳しいことがわからない。でも、彼が危害を加えてくるなんてことは、まずないだろう。
現に彼は右腕が痛まないよう、丁寧に私を運んでくれている。言葉には出さないものの、確かな優しさがそこにはあった。
しばらく進むと、うっすらと一件の小屋が姿を表す。
そこは、私の記憶にも新しい、鱗滝さんの家だった。
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ちづ - こういう小説ずっと探してて!!やっとめぐりあえました!!!!めちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください!応援してます!!! (2020年4月14日 13時) (レス) id: d5e82ff792 (このIDを非表示/違反報告)
須加(プロフ) - 橙咲智歌さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです……!励みになります……。ありがとうございます! (2019年11月11日 7時) (レス) id: 15e826e72c (このIDを非表示/違反報告)
橙咲智歌(プロフ) - とても面白いです!夢の中でトリップして、それが現実と繋がっている…発想が素敵ですね!頑張ってください! (2019年11月11日 1時) (レス) id: ab073858ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:須加 | 作成日時:2019年11月10日 20時