第二十四話 ページ25
「なんでしょうか、先生。」
黒い髪に、首には勾玉のついたチョーカーのようなもの。
探るような、他人を牽制するような鋭い視線が私に向けられる。
善逸の兄弟子の……。
自分の知る人物の登場に、ついつい顔を凝視してしまう。
「彼女には、少しの間此処に住み込みで働いてもらうことになった。困っていたら助けてやりなさい。」
桑島さんが私を紹介してくれる。
目の前の女がただの手伝いだとわかると、彼の視線はいくらかマシになった気がした。
「AAといいます。よろしくお願いします。」
彼に向かって軽く頭を下げる。
「こいつはわしの弟子の獪岳じゃ。仲良くしてやってくれ。」
彼の顔を見るも、決して目が合うことはない。
「……先生、素振りの途中ですので失礼します。」
用は済ませたと言わんばかりに、彼はスタスタと去って行く。やはり好かれてはいないみたいだ。
「すまん、悪いやつではないんだが……。」
桑島さんが困ったように頭を掻く。
「……とりあえず、もうじき夜になる。夕餉の準備を手伝ってもらってもよいかのう。」
「はい!」
―――――――――――――――――――――――――――
一人で食事を作ることが出来ないので、私は桑島さんの指示に従ってひたすら野菜を切っていた。ぎこちない手付きで包丁を扱いながら思う。何故今まで料理が出来るようになるための努力を怠っていたのか。こんな状態で、これから一人でやっていけるのか。
彼がお手本として切った野菜と、私が切ったそれとを見比べる。
……これはひどい。
思わず顔を歪めてしまった。
「……ごめんなさい、役立たずですよね。」
横で食材を煮込む彼にそう呟く。
しかし、彼はそんな私の頭を一撫でし、歯を見せて笑う。
「そんな顔をするな。これから少しずつ出来るようにすればいい。」
その言葉は、心の柔らかい所を暖めるようにふわりと包み込んで、静かに消えていった。
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ちづ - こういう小説ずっと探してて!!やっとめぐりあえました!!!!めちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください!応援してます!!! (2020年4月14日 13時) (レス) id: d5e82ff792 (このIDを非表示/違反報告)
須加(プロフ) - 橙咲智歌さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです……!励みになります……。ありがとうございます! (2019年11月11日 7時) (レス) id: 15e826e72c (このIDを非表示/違反報告)
橙咲智歌(プロフ) - とても面白いです!夢の中でトリップして、それが現実と繋がっている…発想が素敵ですね!頑張ってください! (2019年11月11日 1時) (レス) id: ab073858ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:須加 | 作成日時:2019年11月10日 20時