第二十三話 ページ24
連れてこられたのは、立派な日本家屋だった。
その門構えに圧倒される。
彼に続き屋敷に入れば、外観に釣り合った大きな庭が広がっている。
そして長い廊下を歩いて行き、庭が一望できる一室の前で立ち止まった。
「ここで少し待っておれ。」
そう言うと彼は姿を消した。
座るのもなんだか落ち着かなくて、立ったまま庭を眺めることにする。
梅の木が花を咲かせているのを見るに、今は春なのだろうか。
しばらくそうしていると、廊下から足音が聞こえてきた。
「待たせてすまなかったのう。そこに座ってくれ。」
お茶を手に戻ってきた彼の言う通りに、置いてあった座布団に腰を下ろした。
「名乗っていなかったな、わしは桑島慈悟郎という。」
「AAです。」
「さて、早速本題に入るが、鱗滝の家に行きたいんだったか。」
私は頷く。
「お嬢ちゃんは鱗滝の弟子とかか?」
「弟子……と言っていいのかはわかりませんが、家に帰れず困っていた所を、鱗滝さんに保護して頂き、少しだけ鍛えてもらっていたんです。」
「ふむ。と、なると、家の者も心配しているんじゃないかのう?」
「あ、えと。家は(ここの世界には)元からないです。」
「それは、すまない事を聞いた。」
「え、いいえ!気にしないで下さい!!」
なんだか可哀想な境遇の女だと伝わってしまった。
申し訳ない。でも、いい人だとわかっていても、さすがに出会ってすぐの人には私の詳しい話をするのはまずい。絶対に頭のおかしい女だと思われてしまう。
「鱗滝にはわしから手紙を送っておこう。返事が来るまでは暫くかかるじゃろう。それまでは此処にいるといい。」
「い、いや!そこまで迷惑をかけるわけには、」
「ちょうど人手が欲しかったんじゃが…………。そうか、残念だのう。」
「え、いや、アっ、喜んで手伝わせて頂きます!!」
悲しそうな表情に、私が悪いことをしてしまった気持ちになり、つい反射的に返事をしてしまう。
その言葉を聞いた彼は、悪戯が成功した子供のような笑顔を浮かべた。
「そうと決まれば、わしの弟子を紹介しておこう…………おーい、獪岳!!」
すると、廊下を歩く足音が近づいてくる。
そして、それは私たちのいる部屋の前で止まった。
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ちづ - こういう小説ずっと探してて!!やっとめぐりあえました!!!!めちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください!応援してます!!! (2020年4月14日 13時) (レス) id: d5e82ff792 (このIDを非表示/違反報告)
須加(プロフ) - 橙咲智歌さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです……!励みになります……。ありがとうございます! (2019年11月11日 7時) (レス) id: 15e826e72c (このIDを非表示/違反報告)
橙咲智歌(プロフ) - とても面白いです!夢の中でトリップして、それが現実と繋がっている…発想が素敵ですね!頑張ってください! (2019年11月11日 1時) (レス) id: ab073858ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:須加 | 作成日時:2019年11月10日 20時