第十七話 ページ18
ひとしきり泣いたあと、私の目は案の定赤く腫れた。
寝不足の原因については、鱗滝さん(とその横に座っている錆兎と真菰)に一応話したが、解決策もわからなかった。
そのため、彼は無理をしないように言い、話はとりあえずおしまい。
右腕は折れているし、スプーンやフォークなんてものは此処にはないので、鱗滝さんがご飯を食べさせてくれている。
なんだか子供に戻ったみたいだ。少しだけ恥ずかしい。
「Aは、もう少し体力をつけた方がいい。」
鱗滝さんが話し出した。
さらに彼は続ける。
「この山、狭霧山は空気が薄い。しかもAは、特に運動や武術をしたことがないのだろう。それにまた何時何処で目が覚めるかもわからない。」
確かに漫画で炭治郎も空気が薄いとか、そんなようなことを言っていた気がする。
「これは不安なことだろう。鬼にまたいつ出くわすかもわからない。」
鬼という単語に、体が少し強張る。
「だから、お前を鍛えたいと思っている。嫌だと言うなら無理強いはしないが……。」
根っからの文化系であり、運動部など入ったことはない私。体を動かすのは、学校の体育の授業くらい。基本なんでも人力のこの時代の人と比べて、私はへにょんへにょんの貧弱野郎に違いない。断る理由はない。
口にあった食べ物を飲み込むと、私は元気よく返事をした。
「……頑張って鍛えます! よろしくお願いします!! 」
「怪我があるからな、まずは腕以外を鍛えよう。」
「は、はい……。」
身軽な服装に着替えた私は、山の頂上に立っていた。
登ってくるだけでゼエゼエと息が上がってしまった自分に対し、鱗滝さんは息一つ乱れていない。流石だ。
「此処には罠が仕掛けてある。お前はそれを避けて小屋まで戻ってくるんだ。」
炭治郎がやってた修行と同じ。
いや、それ死ぬのでは。
「脚だけでも避けられるような罠しか仕掛けていないから安心しろ。難易度もいくらか易しくしてある。」
その言葉に少しだけ安心しそうになるが、油断は出来ない。この人の易しいが私にとってはどうかわからない。
「では、小屋で待っている。日暮れまでに戻ってこい。」
「エッアッ待っ」
彼の姿はもう何処にもなかった。
「……がんばろう。」
覚悟を決めるしかなかった。
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ちづ - こういう小説ずっと探してて!!やっとめぐりあえました!!!!めちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください!応援してます!!! (2020年4月14日 13時) (レス) id: d5e82ff792 (このIDを非表示/違反報告)
須加(プロフ) - 橙咲智歌さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです……!励みになります……。ありがとうございます! (2019年11月11日 7時) (レス) id: 15e826e72c (このIDを非表示/違反報告)
橙咲智歌(プロフ) - とても面白いです!夢の中でトリップして、それが現実と繋がっている…発想が素敵ですね!頑張ってください! (2019年11月11日 1時) (レス) id: ab073858ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:須加 | 作成日時:2019年11月10日 20時