今日:24 hit、昨日:111 hit、合計:103,504 hit
小｜中｜大
大人になった彼らの話
日常を少しだけ。
「おはよう、寝癖ボーイ」
日曜日、朝十時。 眠たそうに部屋から出てきたプリン色の猫を、Aはそう呼んだ。 プリン……と言っても、彼の髪は高校時代に比べ随分と伸びており、カラメル部分の方が多くなっている。
「……おはよ」
「研磨ネコは今日もかわいーね。 朝飯、お先にいただいてます」
「んー……」
Aは一足先に起床していたため、すっかり覚醒している。 身なりを軽く整え、いつもより丁寧に用意した朝食を囲っていた。
せっかくの休日だ。 普段よりも悠長に過ごして、一週間頑張った自分達を労わろうではないか。
もたもたと服を着替える研磨をよそに、二皿目の目玉焼きトーストとサラダを用意する。 良い仕上がり、綺麗な焼き色！
「Aありがと、いただきます」
「へい、おあがりよ。 残ったら私が勝手に食べるから、無理しないで」
「わかった」
こくり、研磨はマグカップに注がれた白湯を一口含む。 朝の定番と言えばコーヒーだが、連日ほぼ徹夜でクリエイター活動に勤しむ彼にとって仕事明けのカフェインは不要であるし、Aもそれを分かっていた。 この朝に、脳を叩き起こす刺激物はいらない。
少し古い借家のリビングに、朝食の優しい匂いがふわりと流れた。
研磨とAで、家賃や立地など諸々を相談し決めたこの住処は、すっかり彼らの趣味に染まっていた。 ある部屋はシアターに、またある部屋にはアーケードゲームの機体を置いている。 共働きでお互い稼ぎも悪くないので、なかなか裕福な生活をしている方だと思う。 所謂、パワーカップルというやつ。
「ぷぷっ、ちょっと研磨、パンのカスすごいこぼしてるよ！ うける、老いじゃん」
「あ、ほんとだ。 エイム外してた」
「エイムって……あんたさ、ずっと変わんないよね。 そーいうとこホントに大好き」
トンと、研磨の額を軽く突く。 それで少しだけムッとする彼の表情が好きだ。 人は変わると言うが、案外そうでもないのかもしれない。 高校時代からの付き合いである彼らの間を一新するような変化は未だ見られないし、研磨とA自身も、これでいいと思っている。
「ねえA」
「なーに」
「いつも……その、ごめん」
Aは、唐突な研磨の謝罪に思い当たりがなく一瞬だけ迷ったが、すぐに彼が何を気にしているかを察した。
.
番外1 大人になった彼らの話 ページ45
.
「おはよう、寝癖ボーイ」
日曜日、朝十時。 眠たそうに部屋から出てきたプリン色の猫を、Aはそう呼んだ。 プリン……と言っても、彼の髪は高校時代に比べ随分と伸びており、カラメル部分の方が多くなっている。
「……おはよ」
「研磨ネコは今日もかわいーね。 朝飯、お先にいただいてます」
「んー……」
Aは一足先に起床していたため、すっかり覚醒している。 身なりを軽く整え、いつもより丁寧に用意した朝食を囲っていた。
せっかくの休日だ。 普段よりも悠長に過ごして、一週間頑張った自分達を労わろうではないか。
もたもたと服を着替える研磨をよそに、二皿目の目玉焼きトーストとサラダを用意する。 良い仕上がり、綺麗な焼き色！
「Aありがと、いただきます」
「へい、おあがりよ。 残ったら私が勝手に食べるから、無理しないで」
「わかった」
こくり、研磨はマグカップに注がれた白湯を一口含む。 朝の定番と言えばコーヒーだが、連日ほぼ徹夜でクリエイター活動に勤しむ彼にとって仕事明けのカフェインは不要であるし、Aもそれを分かっていた。 この朝に、脳を叩き起こす刺激物はいらない。
少し古い借家のリビングに、朝食の優しい匂いがふわりと流れた。
研磨とAで、家賃や立地など諸々を相談し決めたこの住処は、すっかり彼らの趣味に染まっていた。 ある部屋はシアターに、またある部屋にはアーケードゲームの機体を置いている。 共働きでお互い稼ぎも悪くないので、なかなか裕福な生活をしている方だと思う。 所謂、パワーカップルというやつ。
「ぷぷっ、ちょっと研磨、パンのカスすごいこぼしてるよ！ うける、老いじゃん」
「あ、ほんとだ。 エイム外してた」
「エイムって……あんたさ、ずっと変わんないよね。 そーいうとこホントに大好き」
トンと、研磨の額を軽く突く。 それで少しだけムッとする彼の表情が好きだ。 人は変わると言うが、案外そうでもないのかもしれない。 高校時代からの付き合いである彼らの間を一新するような変化は未だ見られないし、研磨とA自身も、これでいいと思っている。
「ねえA」
「なーに」
「いつも……その、ごめん」
Aは、唐突な研磨の謝罪に思い当たりがなく一瞬だけ迷ったが、すぐに彼が何を気にしているかを察した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 892人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まめ - 番外編…だ、と……？！ありがとうございますｯｯｯ！！！ (4月23日 16時) (
レス) @page47 id: 99eca05f77 (このIDを非表示/違反報告)
涼夏 - 待ってましたぁ！！！ありがとうございます。いやー新学期始まって癒しがなかったもんですからありがたやっ！！ (4月21日 22時) (レス) @page47 id: b5371def11 (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - なゆちさん» 初めてコメントしてくださったときのこと、覚えています！当初は夢ジャンルに復帰したばかりでしたので、すごく丁寧で温かいあの一言が心に沁みてました🙏毎度、ありがとうございます！ (4月21日 18時) (レス) id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - 涼夏さん» こちらこそ、そう言って頂けて嬉しいです。長い間、読んでくださりありがとうございます！日頃の癒しになれたのであれば、良かったです🙏 (4月21日 18時) (レス) @page47 id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
なゆち(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉初めてのコメントをしてから約一ヶ月も経っていて、少しびっくりしちゃいました笑食べるさま、とてもかわいい研磨くんの素敵なお話をありがとうございました><次の作品も楽しみに待ってます💞 (4月9日 5時) (レス) id: 782e12ed33 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：食べる | 作成日時：2024年3月7日 17時
