5話 ページ5
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「は? ……ちょ」
「私は研磨ともっと仲良くなれると思ってたのに。 ひん」
すんすん、鼻をすする音。
Aは目に涙をため、研磨を見る。
なぜ急に……?
きらい、の一言で泣くものなのか?
「あの、そんなつもりじゃなくて」
「研磨ひどい。 私に謝って。」
研磨は姿勢を低くし、Aの表情を伺う。
これだから、やはり人と関わるのに自分は向いてないと思った。
相手の感情を推し量ることは、正直疲れる。
「えっと、その……ご、ごめんね?」
Aが孤爪に泣かされたらしい! だなんて騒ぎになったら、それはそれで面倒くさい。
研磨はAの背を擦ろうとしたが、気も引けたので出来なかった。
行き場をなくした手は空を切る。
気まずい雰囲気になり、どうすれば良いか分からない。
「ぐすん、慰謝料も搾り取ってや…………ンフッ、フフ、フ」
というのも、杞憂だったらしく
「…………ちょっと、悪趣味すぎる」
「なんちて、うっそ! トラップ、見抜けず踏んだ研磨の負けでーす」
Aは、泣く……どころか、笑いを堪え、今にも吹き出しそうになっているではないか。
ばか、しょうもない奴に騙された!
「……はぁ、もういい。 Aのことなんか知らない」
研磨は小さく溜め息をついて、そっぽを向く。
ふわり、頭に、またあの感覚。
……彼女がそのプリン頭を撫でるのは、これで二度目。
「でも、研磨ってちゃんと謝ったりするんだ。
えらいよー、私なら絶対謝らないね」
「ねえ、なんでいつもおれの頭触るの?」
「うーん、研磨がかわいいから、褒め? 嫌がらせ的な」
「……なにそれ。 矛盾してる」
Aはクスクス笑いながら、心底面白そうに研磨を見る。
正直なところ、研磨にとって自分をここまでからかってくる同級生は初めてだったので、困惑こそあれ少し楽しいと思っていた。
クロでも翔陽でも感じたことがないワクワク。
新しいものは、嫌いじゃない。
「Aはゲームの追加コンテンツみたいだね。」
「うわ、私もあんたに同じこと思ってた。 パクんないでよね」
「……Aを攻略するのはきっと難しいだろうから、ゆっくりしていこうかな」
珍しい。 研磨が楽しそうな顔をしている。
どこで熱を持ったのかは分からないが、これほど踊る目をした研磨など、今後お目にかかれないかもしれない。
……ので、火を点けてみた。
「私の攻略、研磨にできんの?」
バチリ、目が合う。
「やってみるね。」
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まめ - 番外編…だ、と……?!ありがとうございますッッッ!!! (4月23日 16時) (レス) @page47 id: 99eca05f77 (このIDを非表示/違反報告)
涼夏 - 待ってましたぁ!!!ありがとうございます。いやー新学期始まって癒しがなかったもんですからありがたやっ!! (4月21日 22時) (レス) @page47 id: b5371def11 (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - なゆちさん» 初めてコメントしてくださったときのこと、覚えています!当初は夢ジャンルに復帰したばかりでしたので、すごく丁寧で温かいあの一言が心に沁みてました🙏毎度、ありがとうございます! (4月21日 18時) (レス) id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - 涼夏さん» こちらこそ、そう言って頂けて嬉しいです。長い間、読んでくださりありがとうございます!日頃の癒しになれたのであれば、良かったです🙏 (4月21日 18時) (レス) @page47 id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
なゆち(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉初めてのコメントをしてから約一ヶ月も経っていて、少しびっくりしちゃいました笑食べるさま、とてもかわいい研磨くんの素敵なお話をありがとうございました><次の作品も楽しみに待ってます💞 (4月9日 5時) (レス) id: 782e12ed33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:食べる | 作成日時:2024年3月7日 17時